「ピースボートクルーズが地球一周クルーズの中止に伴い、返金の3年月賦を乗客に依頼する。」という記事がありました。今日(5月16日)の時点で返金手続きの対策を行なっているという記事が出てきました。

ピースボート、返金へ

赤羽一嘉国土交通相は15日の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で非政府組織(NGO)「ピースボート」の世界一周クルーズが中止となり旅行会社から客への返金が滞っている問題に関し「会社側から返金手続きなどの対策を進めていると報告があった」と明らかにした。
 観光庁は4月21日、約款通り返金するようクルーズを企画した「ジャパングレイス」(東京)を行政指導した。他のクルーズでは同様のトラブルは確認されていないが、赤羽氏は「業界団体と連携し、適切に対応していきたい」と述べた。

2020/5/15 9:44 (2020/5/15 9:45 更新)共同通信

 一連の記事と、そこに寄せられたコメントを見て、自分なりに思うことを書き連ねたいと思います。実際に2年前に乗船した立場として、できるだけ公平に書くつもりです。項目は2つ。ひとつは「ピースボートとは実際どんな船なのか」ということ。「反日だ。」「洗脳される。」というコメントについても触れていきます。もうひとつは、実際に乗った人間から見た資金力について。これはもしかしたらピースボート側からするとややネガティブな内容もあるかもしれません。いえ、大きな批判をするつもりはありません。ただ、「無条件に素晴らしい。」という論調にはならないということを断っておきます。

ピースボートは本当に「反日」「赤」「洗脳船」なのか

洗脳活動はあるのか→ないです

 以前のピースボートがどうだったかは知りませんが、私が乗ったピースボートは、有料の乗客のおよそ3分の1が外国籍の方でした。台湾の方が圧倒的に多かった記憶がありますが、マレーシアやシンガポールの方もいらっしゃいました。話によれば、ジャパングレイスが外国の旅行会社と提携して海外に窓口を設けたことで、一気にその割合が高まったそうです。何度も乗船しているリピーター(これが想像以上にたくさんいらっしゃいます。)の中には「昔の方が良かった。」と批判的に見る人もいました。現実にこのような構成ですから、政治色はあまり出ていませんでした。それでも「平和」をキーワードにしている船ですから、「核兵器には反対の立場」をとっています。また、SDGsの公式キャンペーン船にも認定されていて、この活動を推進する立場にあるのは間違いありません。
 でも、「核兵器反対」は基本的に日本政府の立場と同じであり、SDGsについても、与野党問わず推進している人が多いので、特にこれをもって一定の政治的なスタンスを示すというには無理があります。
 実際に108日間生活して、何か危ない思想を注入されるような危機感は全くありませんでした。だから、「反日」「洗脳」という話は、あくまでも「参加してないけど、こうに違いない。」という人の感想みたいです。実際、コメントを読んでも「洗脳された」「反日だった」という経験に基づく声はほぼありません。(まあ、洗脳された人間はそれすら気づかないものではありますが。)
 昔はどうか知りませんが、今は「ふつうの熟年層が船上で公民館活動をして楽しんでいる。」というのが実態でしょう。
「北朝鮮に行った。だから反日洗脳船だ。」というヒステリックな論理は、「日本に旅行したから親日だ。」と糾弾するどこぞの国と同じではないかと。もちろん私は北朝鮮には行ってないので、実際のところはわかりません。でも、おそらく「北朝鮮に行ったから赤だ」と言ってる人もピースボートには乗ってないでしょうから、「たぶんこうじゃないか合戦」でしかありません。

与党の議員さんもSDGsバッジつけてます。

辻本議員の関わりは→見えないし話題にもなりませんでした

 「辻本の船だろ」「辻本の説明責任を」という声も多いようです。これは私には判断できませんが、少なくともピースボートクルーズの期間中、辻本議員のことが話題になったこともないし、彼女からのコメントやメッセージが届いたという話もありません。創設当時のメンバーだったことは知ってますが、現在はどういう立場なのかわかりません。だから、「辻本の説明責任」を叫ぶのはどうかと思います。
 思いますが・・・でも、ここからは道義的な観点から、辻本議員がコメントすることも必要ではないかと思ってます。例えば「創設者の一員として、この度の問題には心を痛めており、乗客のみなさまに確実に返金されるため、関係各位と連絡を取っているところです。返金が完了するまで見届けていきます。」くらいのことはコメントしてもバチはあたらないだろうと思います。
 おそらく辻本さん自身に返金滞納の責任はないのでしょうが、だからノーコメントで良いというのも違いますよね。だんまりを決め込むとなんだか怪しく思えてくるというのは、私も同じです。

なぜ横浜ですぐに下船できたのか→わかりませんが疑問は残ります

 ダイヤモンドプリンセス号が長期に渡り船内隔離を余儀なくされていたあの時期、日本に近づきつつあったピースボートがどうなるか、心配していました。2年前にご一緒して知り合いになった方が多数乗船していたからです。(この、リピーターの多さも私には驚きです。)
 ところが、2月15日に横浜に到着すると、何事もなくすんなり下船してしまったということです。確かに中国にも寄港しているけど、それはクルーズの初期段階で、その後1ヶ月半ほどオーストラリアから太平洋上の島々を航海しての帰国です。しかも船内でコロナ症状の人もゼロなら当然の対応だったのかもしれません。それでも、ダイヤモンドプリンセスがあれだけ問題になっているのですから、もう少し警戒しても良さそうなものだと思います。

ピースボートの財務状況をどう見るか

通常でも利益はそんなに出ていないだろう

 ピースボートの乗客は「熟年層」と「若者」に大きく分かれます。その中間層である40代は数えるほどしかいません。その比率は熟年:若者=4:1くらいでしょうか。その若者の半数近くが「ポスター貼りやピースボートセンターでの活動で、割引料金で乗船している存在」なのです。あまり良い評判ばかりでもないポスター貼りですが、若者に聞いたところ、「数千枚貼ればほぼ無料になる」とのことでした。全国津々浦々にポスターを貼って集客する費用が「若者を無料で乗せる。」なのですから、会社としてもコスパは高いのではないかと思われます。ちなみに、ポスター掲示場所を提供してくれる商店や飲食店に利益はありません。
 私が乗った時、確か乗客は1300人程度。その中で正規の料金を払っていない人が100人程度いたとします。(これはきちんと調査していませんが、大きく外れてはいない筈。外れているとすればもっと多いかも。)
 すると、単純計算で1200人の乗客が、スタッフ300人に無料の乗船者100人、そして乗船しないで国内で活動するスタッフも加えて400人以上を3ヶ月間養うことになります。おそらく人件費で費用の3分の1が吹っ飛ぶでしょう。船は自前でなくチャーター船なのでレンタル料も発生するし、食費や燃料代、船のメンテナンス費用まで含めると、それほどの儲けはないだろうと見ています。だから、若干料金設定が高いと思われるオプショナルツアーあたりも収入源として欠かせないのだろうと思っていました。

 私はピースボートの管財人ではありませんから、実態はわかりません。でも、普通に考えて「北朝鮮にお金が渡ってる」「辻本議員の懐に入っている。」というのは現実的に無理があるでしょう。それほど潤沢な資金があるとは思えません。(ごめんなさい。)

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エコシップ はどうなった?

エコシップ 、完成してくれよ!

 個人的に、エコシップ がどうなっているのかが一番心配です。予定では2020年に出航する筈だったのが、「安全基準の変更に伴い一部仕様の変更もあり、2年遅れる。」という話までは聞きました。
 今まで、古い型の船を長期レンタルの形で借り上げて使いまわして、それでも(多分)資金繰りが楽でなかっただろうジャパングレイス(ピースボートを扱う旅行会社)が、本当に新造船を作る体力を持っているのか、正直不安ではあります。おそらく、安定した集客の土台作りとして、海外に販路を拡大したのでしょう。うまく軌道に乗ってくれれば良いなあと思います。
 さて、工期の問題です。常識的に考えて、既に船の建造が始まっているのなら「ここまで出来てます。」というアナウンスをして客を安心させたいところですが、ホームページには想像図が載っているだけで、進捗状況が伺える資料はありません。もちろん新しいタイプの船でもあるし、ある程度の守秘義務はあるでしょう。そこは理解できますが、「詳細は言えないが、パーツの組み立てに入った。」「ジョイント工程で船の形が見えてきた。」とかのアナウンスはできそうなものですが。
 これから作り始めるとすれば、他の客船の例からすると少なく見積もっても1年ちょっとはかかり、その後実際に航行させながらスタッフの訓練と船の点検調整に数ヶ月かかるでしょうし、少なくとも2020年中に作り始めてギリギリではないかと思われます。

中止に伴う返金のその後

 私がクルーズに申し込んだ時、「早い時期に入金すれば、割引する。もし、その後個人的な理由で取りやめになっても返金はあるから大丈夫。」と言われました。その時、「ああ、資金繰りが楽ではないのだろうなあ。最悪倒産したら返金ないよなあ。」と頭を過ぎったのは事実です。しかも、その入金にクレジットカードは使えませんでした。この点も不安になったところです。イザという時、カードの補償制度が使えるというのは安心ですから。
 それでも、「まあ、きっとつぶれないだろう。仮につぶれたら、その時は笑って諦めよう。」とも思ったものです。所詮は「旅行」ですから、それがパーになっても命に関わる大打撃ではありませんから。
 その後、「希望者が殺到してキャンセル待ちが出ている状況なので、もしも次のクルーズに変更して下さるなら、さらに割引します。」という文書が届き、ここでようやく「クルーズはあるな。」と確信できました。もちろん変更はしませんでした。

 おそらく、2年前の当時から潤沢な資金を誇っていたとは言えない状況だったでしょう。ギリギリの状態で何とか回していたとしたら、少し先のクルーズ予約をとって当座を凌ぐというのもわからなくはありません。
 ところが今回は、中止に伴い、いきなり30億に及ぶ返金が発生したわけです。(150万円✖️2000人と概算)既に集金の一部は使われてしまったかもしれません。船は止まっていても莫大な維持費と人件費がかかるでしょうし、船会社へのリース代もなくならない筈。このあたりは、休業状態でも家賃が重くのしかかる飲食店と同じです。それが、いきなり膨大な額の返金ですから、ジャパングレイスは苦しいに違いありません。というより、「3年払いにしてくれ。」と乗客に言ってきた時点で「苦しいです。」と告白しているのと同じです。

 では、どうすればいいのでしょう。もし、全ての返金に応じたために破産することになったとしたら、それはそれで仕方がないのかもしれません。でも、それはもちろん「返金できた場合」です。返金がままならずに破産となれば、ほとんど回収できないという状況も生まれるでしょう。
 それなら、「3年払い」を受け入れ、何とか会社がつぶれない方に賭けるのもひとつの手かもしれません。もしかしたらその間に破産してしまい、結局全て回収できずに終わる可能性も否定はできませんが、可能性は残ります。

 ただ、記事のコメント欄には「3年払いです。」と言い放たれたという声もあり、これが本当なら対応に問題がないとは言えません。
 「返金すべきですが、諸費用をすでに払い込んでおり、全額返金ですと倒産の恐れがでて参りました。何とかお客様から預かった分を全額返金するため、猶予期間を設けていただけないでしょうか。」というスタンスなら理解もできようというものです。(それでも規約違反ではありますが。)

 最近「1回の料金で2回目は無料」という、法外なプランが出てきました。つい最近、私のところに「乗りませんか?」という勧誘電話が来たりもしました。かなり必死に対応しているのはわかりますが、それで今を凌いでも、その次に苦しくなるのは必至でしょう。

では、お前は乗るのか→10年後に乗る予定です

 実際乗ってみて分かることですが、「洗脳」も「宗教」もありませんし、政治思想を植え付けられるようなこともありません。船の上でお気楽な仲間とワイワイサークル活動をを楽しみながら3食昼寝付きで遊ぶのですから、楽しいもんです。食事が貧相だという意見もありますが、普通に家で食べるよりずっと豪華です。半袖短パン姿で、デッキで食べる食事はいいですよ。お金のある人は、連続して乗っている人も結構いたりして、「有料の高い老人ホームなら、こっちの方がいい。」という気持ちもわかります。そこそこの資産があれば、自分もそうしたいくらい。

 楽しい船の旅でしたが、同じ百数十万円を出すのなら、自分で行きたいところにピンポイントで行く方が自分には合っているようです。だから、しばらくはクルーズには乗りません。でも、10年くらい経って、気持ちと体力とお金に余裕があれば、また乗りたいとは思います。

どうかそれまでピースボートが存在していますように。

7月12日追記 クラウドファウンディングが立ち上がったが

 「ピースボート を存続させよう」というクラウンドファウンディングが始まり、過去の乗船者を中心にかなりの金額を集めています。船が出なくてもピースボート スタッフは日々の活動を続けており、その事務所の家賃等もあり、かなり厳しい状況のようです。
 実際の船の運行に関しては「ジャパングレイス」という旅行業者が担当しています。ピースボート というNGO団体とは別組織になっています。とは言え、ジャパングレイスはピースボート以外の旅行を扱っているわけではなく、一般市民からすれば同じ団体と思われるかもしれません。(私自身、NGOと利益追求できる会社の棲み分けをしているがほとんど同一組織と理解しています。そこはもしかしたら私の誤解があるかもしれません。)
 今回のクラウドファウンディングは、「NGOピースボート 」に対するもので、ジャパングレイスを救おうという話ではありません。クラウンドファウンディングのページにも次のように書いてあります。

【お願い】今回私たちは、ピースボートの運営資金確保のため、このプロジェクトを立ち上げました。
キャンセルとなったクルーズの返金についてはピースボートの回答の通り、旅行会社ジャパングレイスが最も大切なこととして対応していることを確認しています。
その上で本プロジェクトではピースボートへの支援の呼びかけを趣旨とさせていただいていることを、ご理解いただけますようどうぞよろしくお願いいたします。

GoodMorning #がんばれピースボート

仮にピースボートがクラウンドファウンディングで生き残り、ジャパングレイスが倒産したらどうなるのか、それでも返金には回さずピースボート としての活動資金にするのか、そこまで考えるとなかなか難しい問題です。できれば、「ジャパングレイスがきちんと返金して、それでもピースボートが存続できるために寄付をお願いしたい。」と言えるなら良いのですが・・・さすがに30億+当面の活動費を集めるというのは厳しいようです。

 一介の小市民である私にできることはほとんどないのですが、なんとかジャパングレイスが顧客への返金をきっちり済ませ、コロナ解決後に再び船が出せることを願わずにはいられません。
 いろいろな意見があるものの、体験した者として「貴重な船である」ということは断言できますから。

追記 「未来乗船券」なるシステムで、先にお金を入れると多少の利子をつけてクルーズ費用に充てるという話がきました。倒産してほしくない船なので、ほんの少しですが入金しました。これで私も乗船するのが確定です。(実際に乗るのはたぶん2030年頃かな?それまでピースボートが存続してくれることを祈ります。)

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