開聞岳。富士山のような端正な姿が海面からすっくと立つその姿は、美しいの一言に尽きる。北アルプスのゴツゴツした岩の山がプロレスラーなら、こっちは二枚目俳優というところだろうか。(おっと、なんだかいつもと文体が違うぞ。)

 3月6日(土)、雲仙普賢岳を降りて今日は移動日。途中の山をすっ飛ばして九州の南にやってきた。指宿のコインランドリーで洗濯をしてから開聞岳の麓にある「山麓ふれあい公園」に向かう。目隠しになっている手前の山のトンネルを抜けると、きれいな稜線が見えてきた。想像よりでかい。1000mに満たない山ではあるが、よく考えたら海抜ゼロに近い場所から山の全体が見えるわけだからデカいわけだ。

 「山麓ふれあい公園」はキャンプ場やグランドなどの施設があり、利用者は登山者だけでない。コロナ禍ではあるが、まずまずの賑わいを見せている。小さな子も多い。感染防止とレジャーを両立させようと思ったら野外だ。その気持ちはみな同じだろう。

リンク 指宿観光ネット「かいもん山麓ふれあい公園」

 管理棟の受付で「明日登るつもりですが、天気はどうですか?」と聞くと、「明日は1日雨の予報です。あまりお勧めできる天気じゃないですね。」移動日の今日はまずまず良い天気で山頂まで見える。これは判断を誤った。少々無理しても午前中に到着して、登ってしまえばよかった。こう考えると、悠長にコインランドリーで時間を潰した自分がうらめしい。でも、過ぎた時間は戻らない。くよくよしても仕方がないから、2日後の再チャレンジを決断。

 3月7日(日)、山川港からフェリーで対岸に渡り、雨の中佐多岬を観光。「本土最南端到達証明書」をゲット。

 3月8日(月)、車中泊していた山川港の道の駅を出発し、再び「山麓ふれあい公園」にやってきた。やや薄曇りだが山頂までしっかり見える。朝早いため、まだ管理棟はオープンしていないが、掃除をしていたおじさんが「今日は最高やね。」と声をかけてくれた。うん、地元の人が最高というのなら間違いない。

リンク 道の駅山川港活お街道

月曜の早朝なので、駐車場はガラガラ。

 車の中で朝食をとり、お湯を沸かし、登山開始は7時20分。スタートは公園内のパークゴルフ場の中を通り、一度舗装道に出て10分ほど進むと登山口の看板が出てくる。登山口の下には広い駐車場があるが、今はロープで閉鎖されている。ハイシーズンになるとここも満杯になるのだろう。「ここに停めれば少し楽だなあ。」と一瞬思ったが、コロナの世界の今は人が少ない方が有難いと思い直して登山口に入る。

2合目のここから登山がスタート。
往復5時間半ですね。

 地図によれば開聞岳の登山道は、ぐるりと山を螺旋状に回りながらほぼ同じ角度で登っていく。せっかく登ったのにまた下るという悔しい場面がないものの、一息つく区間もなく一気に登ることになる。東北で生活している人間の目には「南のジャングル来た!」と言いたくなる森の中をひたすら登る。途中、道がずいぶん掘られている場所もある。(自分も含めた登山者の影響だな。)眺望はなく、いったいどれくらい登ったのかもわからない状態がしばらく続く。

道が激しく掘れている。こういう登山道、時々見かけます。

 8時20分、5合目に来たところで、ようやく展望スペースがあった。地図によれば登山口から90度くらいの場所に来たようで、遠くに長崎鼻の岬が見える。そしてここは「レスキューポイント」でもある。「レスキューポイント」ということは、ここから怪我人をヘリに引き上げるのだろうか。

5合目でようやく眺望が。
長崎鼻の岬が見える。でも、ややぼんやり。

 6合目を過ぎると、時々岩場も出てくる。スタートからちょうど180度回ったあたりの7合目で、海側の視界が開ける場所がある。(後に判明するが、海側がきれいに見えるのはここだけ。)屋久島や種子島も見えるはずだが、今日はダメのようだ。7合目を過ぎるとすぐに「仙人堂」という岩場がある。「同じくらいの勾配」と地図で判断していたが、8合目目から上はやや急な岩場になり、梯子などもある。危ないことはないが、夏場の暑い時期は厳しいかもしれない。

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6合目付近。岩場が出てきた。
屋久島も見えるはずだけど・・・。
山伏の修行の場だったとか。
山頂はもうすぐ。(疲労?写真もブレてきた。)
おー!梯子発見!
山頂直下、登山道からちょっと脇にあり、見逃す可能性もあり。

 9時30分、山頂に到着。眼下にスタート地点の「ふれあい公園」や池田湖がきれいに見える。残念なのは木がじゃまで海側が見えないこと。360度の眺望なら素敵だろうな。でも、そのために自然の木々を伐採するのも問題だし、これはこれで仕方がない。岩場の一角に「皇太子殿下登山御立所」(おたちじょ?おんたちどころ?)という石板がある。皇太子殿下(今は天皇陛下)は登山が趣味で、時々皇室関連番組で那須の登山の様子が映っていたっけ。でも、天皇って大変だなあ。ここに登られた時も案内人や従者がぞろぞろと付いてきたのだろう。美しい自然を静かに満喫するなんてできないのかもしれない。誰もいない山頂でパンをかじりながら、天皇と自分の、はたしてどちらが幸せなのだろうかと思う。(まあ正直いいますと、子供のころは歳も離れていない皇太子を羨ましく思ってました。)開聞岳山頂のひとときを一人噛み締め、下山開始。

山頂からの眺望は、北側のみ。

 平日(月曜日)ということもあり、登山客はほどんどいない。全行程ですれ違ったのは10人程度。その中に、東京から来たというインド人男性と日本人女性のペア(恋人か夫婦か、それともただの友達かは知らん。)がいた。7合目の展望スペース付近ですれ違い、少し話をした。彼らはこの後、屋久島に渡るという。「自分も屋久島行きたいけど、観光協会のサイトを見ると、『2週間前は旅行や外出を控えて』『少しでも体調が悪かったら旅行を取りやめて』など、かなり心配している様子なので、今回はやめておこうかなと思ってました。」と言うと、「そうですか。そこまで見てなかった。でも、行ってお金を落とすことも大切だと思うし、私たちは予定通り行ってきます。」そうだようなあ、お金落とすってことも大切だよなあ。朝、公園の駐車場で話をした男性も「屋久島、良かったですよ。コロナ?特になにも言われませんでした。歓迎してもらえましたよ。」と言ってた。自分が考え過ぎ、ビビり過ぎなのだろうか。

 山を下りながら、「屋久島、行ってみようかな・・・。ここまで来たんだし、行っちゃおうかな・・・。」そんな気持ちがどんどん高まってきた。

 11時30分、駐車場に戻る。(すぐにコンパスアプリで「登山終了」を送信。)管理事務所に行き、山頂の温度計が割れていたことを報告し、車に戻って明日以降の天気を確認。3日ほど天気は悪くない。やっぱり屋久島、行っちゃおうかな・・。フェリー情報を検索。なにいっ! 指宿からのフェリーは当面運休とな! 鹿児島から乗るのか。駐車料金かかるなあ。いやだなあ。でも、改めて屋久島行きを計画すると、どう考えても10万はかかるよなあ。

 いつまでもうじうじ悩んでも仕方がない。行ってみよう。(続く)

登山コンパスアプリから。
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