基本的に冬山には登らない。雪国山形で生まれ育った身としては、雪に覆われた世界は日常であり、下手くそながらスキーもしてきた人間にとって、わざわざ雪の中を歩く気にはならないのだ。だから山登りも春から秋までがひとつのシーズンで、3月下旬から4月上旬がスタートとなる。この時期はまだほとんどの山に雪が残り、ではどこか大丈夫かというと、四国や九州あたりの山になる。そんなわけで1年ぶりに九州にやってきた。

 昨年の4月、九州の三百名山はほとんど登ったが、未踏の地がいくつかある。今回はその全てを登ってやろうという気持ちはなく、九州の友達に会いに来たついでに少し登ってみようというわけだ。(今シーズンのメインは、四国中国、そして紀伊山地)

 背振山は、昨年も山頂には来たが、それは登山とは言えないもの。ここは自衛隊のレーダー基地がある関係で、山頂までしっかり道路があるのだ。山頂部の駐車場に車を停めたら、10分も歩けばすぐに山頂というお手軽さである。しかし、さすがに「背振山登ったよ」というには恥ずかしさがあるので、麓からの最短コースでちょっとだけ登ろうというわけだ。

 山形から車を走らせると、九州に突入するまで3泊4日かかる。(高速を使えば1泊2日の行程だが、料金が大変なことになるので一般道を使っている)今回もあちこちの道の駅に泊まりながら5日かけて関門トンネルを越えた。そしてまっすぐ背振山へ。

 4月14日、午後1時に登山口に到着。ガイドブックには大きく取り上げられていない、山頂への舗装道の途中にある。一般的には車谷口から権原峠を経て尾根を歩く周回ルートや、永山峠から蛤岳を通る九州自然歩道ルートなのだろう。いずれも6時間程度なので困難なルートではないが、今回は到着が午後になったので一番お手軽な道にする。本来は午後の出発はタブーなのだが、往復2時間程度で、しかも山頂には自衛隊員が待機している。ここで猛吹雪に遭っても助かる自信しかない。

登山口わきのスペース
登山開始

 登山口の駐車場は道路わきのスペースに数台しか置けないが、先客は2台だけですんなり駐車できた。すぐに登山開始。(登山と表現するのもちょっと恥ずかしい距離ではある)

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山頂近い
山頂は霧で何も見えず

 マイナーなコースではあるが、それでも樹齢400年の大杉や、「たにし仏」という坐像があったりしてこれはこれで楽しい。ちょうど1時間で山頂に着き、今シーズンの無事を祈ってすぐ下山開始。帰りは「飛行家ジャピー氏遭難の地」というモニュメントを見学。昭和11年11月にパリから飛んできたジャピー氏の飛行機がここに墜落したが、地元市民や消防団の迅速な捜索と救助が功を奏して奇跡的に助かったというお話。ジャピー氏は4ヶ月の療養後、3月にフランスに帰っていったそうだ。なんて良い話なんだ。このモニュメントと説明看板を見たことが、背振山最高のハイライトとなった。

 午後3時、下山完了。霧の中で景色はさっぱりだったが、とりあえず「背振山には登った」と言ってもいいだろう。

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