予想よりも早く雲取山を下山できたので、和名倉山の登山口にも午後3時過ぎに着いた。こちらは一ノ瀬高原というリゾート地のようだが想像より鄙びた感じ。資料によれば登山口駐車場はなく、民宿の駐車場に料金を払うことになっている。勝手に民宿のイメージを膨らませて行ってみると、ほぼ予想通りの民宿があって嬉しくなった。民宿のおばちゃんに2日分1000円を払い(注:早朝に来て日帰りなら500円)、民宿でビールを飲んでいた4人組に刺激を受けて1本いただくことにする。

 民宿はおばちゃんひとりで運営しているらしく、今は素泊まりしか受け入れてないという。特に頼んだわけでもないのに「揚げパンあるから食え」「この煮物もうまいぞ」と出してくれる。ごく普通の田舎のおばちゃんである。4人組のお客さんは、なんでもこの地域伝統の「春駒」という祭りを見に来たという。夕方5時から始まるというので行ってみることにした。

 車の中で早めの夕食を食べ、少し休もうとウトウトしてたら5時になっていた。4人組はすでに出ただろう。自分も祭りに行くとしよう。民宿から20分ほど歩き、何やら飾りのある公民館を見つけた。集まっていた人に聞くと祭り会場で間違いないとのこと。観光客である旨話し、見学させていただく。少し会場をウロウロした後、年配の方に色々と話を伺っていたら、焼き魚と缶ビールを頂いてしまった。これはご祝儀が必要だったかも。

 祭りのメインは暗くなってからの舞で、色とりどりの紙の飾りが夜の闇に映えて美しい。祭りの後半には御神酒が振る舞われ、断るという術をしらない自分は結局四合ほど頂いてしまった。

この後、すごい量のお酒をいただく

 祭りが終わり、知り合いの家で軽く宴会をするという4人組と別れ、真っ暗な道を車に戻り、お休みなさい。(明日、起きて登山できるのか自分?)

 5/4、朝4時にしっかり目が覚めた。昨夜のアルコールも影響なさそうだ。天気も良いし決行する。朝食と準備を済ませて4時40分出発。将監登山口から一般車両は入れない林道を30分ほど歩くと、牛王院平にまっすぐ向かう登山道を行く。尾根道だが傾斜が緩いので厳しさはない。若干倒木で道が荒れている場所もあるが、大きな問題はなく快調に進む。牛王院平に出ると将監小屋からのルートと合流し、小屋泊の登山者もちらほらと見られる。時計は6時を少し過ぎたところ。ここからが登山の本番と言える。

こわっ
林道歩き
なだらかな尾根を行く
将監小屋からのルートと合流

 笠取山への分岐を右に進み、まずは東仙波に向かう。道は西御殿岩(2075m)を巻くのだが、道が狭い上に笹藪が被さっていて、うっかりすると滑り落ちそうになる。仮に滑ってもそのへんの笹をつかめば止まるだろうが、それでも少し緊張して歩く。

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少し危ない所あり(モデルは途中で一緒になったおじさん達)
東仙波からルートを振り返る

 西仙波から一旦下るところが急な岩場でビビったが、7時25分、無事に東船場に着いた。全体の3分の2くらい進んだので、ここで少し長めの休みを取ることにする。少し遅れて若者がやって来たのでお喋りする。聞けば100キロを超える巨漢だったのが、ダイエットを決意して山に登り、見事普通の体型に生まれ変わったという。そんな彼は今では山そのものにハマり、今回は初の天泊を経験した。「自分がリュック背負って山にいることが信じられない」とも話していた。

 15分ほど休んで再開。東仙波を一旦下り、稜線を小さな登り返しを数回繰り返して、8時40分三瀬分岐、山頂には8時55分に着いた。山頂は、山頂と呼んでいいのかわからないような平らな林の中にある。眺望を視点にすればいわゆる「がっかり」の山頂かもしれないが、そもそも山は山頂だけで価値が決まるわけでなく、そこに辿り着くまでも景色と経験の積み重ねに意味がある。その意味ではこの静かな山頂も悪くない。実際、先に下りていった夫婦が「何も見えないけど、なんか落ち着く場所ですねw」と言ってた。

山頂へ
途中端折っていきなり山頂写真
お祭りでいただいたお菓子(パン?)をいただきます

 さあ、下山しよう。ほぼ同じペースだった「ダイエットに成功し山にハマった若者」は秩父湖の方に下るので途中で別れ、往路のことを振り返りながら1人で帰路につく。ルート上一番眺望が良く休むスペースもある東仙波でコカコーラを開封! 最近、コーラを1本持っているのがマイブームだ。ギンギンに冷たいわけではないが、リュックの中は思ったほど温度が上がらないようで、そこそこ冷たいコーラを堪能できた。

 帰りは将監小屋を見て行くか。少々遠回りだけど牛王院平から将監峠に向かう。そして賑わっている小屋を通り、あとは長い長い林道をひたすら歩き、登山口に戻って来た。

 13時45分、民宿のおばちゃんに挨拶。ずいぶん早かったねとおばちゃんに褒められて車をスタートさせる。途中、昨日祭りで一緒だった4人組(国道のバス停まで歩いてた)に出会うが、車が車中泊仕様のため乗せることができない。ちょっと申し訳なかったが、挨拶だけしてお別れした。思えば彼らと話をしなければ「春駒」という祭りのことを知ることはなかっただろう。その意味では感謝である。(仮に今日、二日酔いで山を諦めてしまい、その上翌日から雨だったりしたら、この気持ちは微妙に違っていた可能性もある)

 ついでに言うと、4人組の中で唯一の女性がけっこう可愛い人であった。(特に何かを求めているわけではない)

 この後、知り合いと神奈川の大山に登る約束をしていたが雨で中止になった。和名倉山を最後に今回の遠征が終了し、一度山形に戻ることになる。

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