えーーーーっ おかしいでしょこのナビ

 登山口の駐車場は冠山峠にある。荒島岳を下りて福井県大野市で風呂に入り、ナビをセットすると、おいおい、車のナビもグーグルマップも大きく周って反対側から入るルートを指定してきた。真っ直ぐなら1時間で行く筈が、これでは3時間かかることになる。これはつまり、こちら側は通行止めということかもしれない。それにしても遠すぎる。とりあえず福井県池田町まで行ってみて、そこで情報収集することにする。

 池田町に入ったら、「町の駅」なるものが現れた。ふむふむ、これは道の駅の亜種だな。地域の案内所も併設しているようなので中に入って聞いてみる。
「すみません、冠山峠は通行できますか?」
「はい、峠まで通れる筈です。」
 それなら大きく迂回する必要ないじゃん。そのまま行って見よっと。

 国道417号線から林道冠山線に入ると、断崖を縫うようにガードレールもない道が続いている。非常に恐ろしいが舗装道路なのでパンクの心配はない。このまま峠まで行けますようにと祈りながら時速20キロで車を走らせると、なんと峠まで行けてしまった。
 しかも、反対側の方が通行止めになっているではないか。ナビを信じて大回りしたらとんでもないことになってた。ふうっ、よく思いとどまって情報収集したぞ自分。

向こう側通行止めじゃん、こっちで正解じゃん
尖ってる山は苦手です 怖そ

 峠には一人男性がいて、反対の岐阜側から自転車で上ってきたという。そちらは車両通行止めだが自転車と徒歩は入れるとのこと。(公式にOkかどうかは定かでない) 無理して突っ込んだ軽トラがいたが、途中の尖った落石か何かでパンクしたみたいで下りていったそうだ。聞けば聞くほど池田町まで来て確かめてから動いた自分を褒め称えたい。

 峠には他に車はなく、今日も一人で寝る。しかも明日の予報は午前中が雨で、昼から回復することになっている。コースタイムも3時間なので「11時過ぎたら進まない」という自分ルールを破るつもりだ。だから明日は早起きの必要はない。だらだらと過ごそう。

 夜中から強風で車がユサユサ揺れ、雨も降ってきた。でもこれも予報通りなので気にしない。朝は普通に目覚めてしまったが、まだ雨が残っているので再び車の中でお昼寝をして過ごす。

 10時少し前に赤い車が登ってきて、2人組が登山を開始した。まだ小雨が残っているので自分はもう少し様子を伺う。そして11時になって雨も止み、空もいくぶん明るくなってきたので、出発することにする。

 冠山そのものはずいぶんと尖った山容で、最後の登りはかなりきついだろうし恐ろしいに違いない。しかし、そこまでのルートは平和だ。特に危険な急登があるわけでもなく、いくつかの登り返しを経てじわじわと高度を上げていく。というより、冠山峠で既に1000mを超えており、1254mの山頂まで標高差200mしかないのだ。

 スタートは緩やかに「田代尾根ノ頭」というピークまで東に進む。そこから道は90度折れて南の冠山へと続いている。眺望があるわけでもなく単調な道だが、山頂直下には12時過ぎに着いた。すぐには山頂に向かわず、冠平という広場で小休止し、これから登るルートを確認する。かなり急で恐ろしい登りだ。

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スタート
山頂直下まではあまり変化のない道が続く
少し開けてきた
前方の広場が冠平

 冠平には遭難の碑がある。昭和30年の11月、福井銀行の職員24人が遭難し、2人が亡くなったとある。今でこそ峠から往復3時間のコースだが、当時は下の町から登ったのだろう。遭難してもスマホがあるわけもなく、連絡も取れなかったはずだ。装備の面を考えても、今なら助かったのかもしれない。
 各地の山に登ると、時々このような遭難の記録が石に刻まれている。そういう犠牲の上に、登山道の整備やら通信技術、装備の改良が重ねられて現代に至るのだろう。まずはしっかり手を合わせて山頂に向かう。

右側の斜面を登ります
けっこう急だな 気をつけよっと

 山頂までの急登はかなり急で、油断して石を落とすと大きな事故になりかねない。幸い今日は登山者が少ない。登りの途中で先行していた夫婦が降りてきたが、落石を受けない位置で待機し、そして2人が下まで降りるのを見てから再度登り始めた。へなちょこが自分で事故るのは自己責任だが、他の人に危害を加えることは避けねばならぬのだ。

 実際のりは20分程度で、あっという間に山頂に来た。山頂はそれほど広いわけでもなく、高所恐怖症の自分には安らげない場所なので、10分ほど休んで水分補給したら、すぐ下山する。

山頂 狭いからすぐ下りる

 ロープを頼りに急登を下れば、あとはだらだらと山の中を歩くだけだ。特に問題もなく、足を痛めることもなく、14時すこし前に駐車場に着いた。もうすぐ終わりだなと思った頃に登ってきた男性とすれ違い、「林道でクマを見ました」という話を聞いて少し緊張したが、そんな気配を感じることもなく無事下山できた。

 当初の予定は冠山に登って峠に戻った後、反対側の金草岳にも行くつもりだった。でもそれは普通に朝スタートしたらの話。今日はこれ以上頑張らずに、終了とする。どこかで風呂に入って、次の能郷白山の登山口に向かう。

麓に良い温泉あった
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