2021年6月23日

 早朝、紋別の港湾緑地駐車場を出発。ここからオホーツク海沿岸を北上し稚内を目指す。このコースはおよそ40年前に自転車で走った路である。その時も確か紋別あたりで寝たような気もするが、さすがに記憶も曖昧で街の様子も様変わりしているからよくわからない。(当時は駅の軒下で寝るのが定番でした)

 稚内からはフェリーで利尻島に向かう。駐車場に車を置き、ここからは自転車での移動になる。(結果的に徒歩でも問題なかったかな)鴛泊港に着いたら自転車を走らせ北野野営場に向かう。たった4キロの道のりだがダラダラの登りが続きかなり足を使ってしまった。到着した時には太ももがガクガクで、明日歩けるか心配になる。

これで乗船
目標がきれいに見える

 そしてテント設営。久々にテント一式を広げてみたらポールのゴム紐が伸び切っていて、本体に挿入する途中で外れることを繰り返し、結局1時間近くかかってしまった。(隣にいたおじさんは「初めてテント立てる人なんだと思ってた」とのこと。そりゃそうだよね。)

6月24日

 午前4時スタート。15分ほどゆるやかな舗装道を歩くと「甘露泉水」がある。ここから先に水はないので十分すぎるほど水を汲む。今日はおそらく時間がかかるだろうから4リットル。(水ないと元気がでないタイプです)

さあ、しっかり水を汲んで

「甘露泉水」からが本当の登山開始。森林の細い山道を進むとすぐに3合目の標識がある。標識があると自分の立ち位置と時間配分がわかるので有難い。これを基準に進むことにしよう。今日の天気は快晴ではないものの、薄雲が空の高いところに広がる晴れの日だ。登山には一番良い天気と言える。ラッキーだ。(いや、3日ほど天気が続く予報が出たので急いでやって来たのだ。これが時間を自由にアレンジできるソロ登山者のアドバンテージだな。)

標識がありがたい

 4時50分、4合目を通過。3号目から30分で来たので、単純計算だと山頂は8時ということになるが、そうそう上手く事が運ぶ筈もないのでこだわらないことにする。それでも昼前には着くだろうという根拠のない安心感を感じて進む。このあたりから時々景色の開ける場所があるのでちょっと楽しい。まだ山頂は見えないが、そっちの方向に怪しい雲もないので今日は素晴らしい景色が堪能できるだろう。

 5時40分、6合目通過。少し進むとトイレブースが出て来た。トイレではない。あくまでも携帯トイレを使用するスペースだ。利尻岳にはトイレがなく、登山者は携帯トイレを持参し、用をたしたらそれを持ち帰らなければならない。これは、北海道のかなりの山でのルールである。立ち○○もしてはいけない。(幸い自分は動き始めるとほとんどトイレに行く必要がない体質で、トイレブースの使用も、廃棄物持ち帰りも未経験)

天気がいいぞ

 6時すぎに7合目に到着。ここから「胸突き八丁」と呼ばれる急斜面になる。狭い岩の斜面で、ここは落石に注意しなくてはならない。時間が時間なので下山者もなく、後ろにも誰もいないので若干気楽ではあるが、だからといって石を落として良いわけではないので慎重に登る。途中の展望台でちょっとだけ休んで水分補給したら又登り。距離はそれほどではないものの、少々堪える急登といえる。

けっこうキツイ

 そんな急登も50分ほどで終わり、8合目の「長官山」に到着した。ここに来て初めて残雪を纏う山頂が顔を出した。雲もなくはっきり山頂が見えている。これは良い。(そしてここで本日初めて人に会う。)ここからは尾根伝いにハイマツ群落の中を歩く。胸突き八丁に比べると斜度は緩く、歩き易い。しかし、西の斜面から少しずつ雲が湧いているのが見える。これは・・・いつもの「山頂だけ視界が悪く、諦めて降りたら綺麗に山頂見えてるじゃん攻撃」かもしれない・・不安だ。

スポンサードリンク

 長官山から10分少々で山小屋の到着。(ここはあくまでも緊急時の避難小屋であり、最初からここに宿泊する計画はダメです。)とりあえず中を見学。まあまあ普通の避難小屋という感じ。窓際には忘れ物とおぼしき品が並び、トヨタのキーも。(これを忘れた人がその後どうなったか気になる)
 ここに水を2リットルだけ置いて、少し身軽になって先に進む。

8合目 山頂が見える
ここは非常時以外泊まれません
気持ちの良い初夏の山路
整備、大変だったろうな
もうすぐです

 山小屋からハイマツの緩斜面を歩くと、最後の登りである。ここから先は山道の崩壊が激しいようで、土砂止めの階段が丁寧に作られている。おそらく近年の百名山ブームで登山者が殺到したことが原因のひとつだろう。そんな自分もブームに乗ってここまで来たわけだから偉そうな批評はできないが、せめて土砂を崩さないようにしよう。

 8時30分、無事登頂。案の定雲に覆われて山頂だけ眺望なしになった。うーむ、これが我が人生か・・・まあ良い。雨が降ってないだけ有難いのだと気を取り直して下山開始。しばらくして振り返ると、やはり雲はなくなっている。(それならもう少し山頂にいれば良かったのに・・・いえ、違うんです。山頂に1時間滞在すれば雲も1時間そこにいるのです。そして1時間遅れで雲の切れた山頂を下山途中で拝むのです。知ってるんです。泣)

山頂だけなぜか視界悪し
下山開始

 下りはポツポツと人に会う。途中写真を撮ってあげたり、上の様子等を情報交換してりしてゆっくり降りる。5合目付近でソロの若者が登ってきた。
「上までどれくらいかかりますか?」
「人にもよりますけど3時間くらいです。」
「いけるとこまで行ってみます。」
「頑張って下さい。ところで水はお持ちですか?」
小さなリュックだけの姿に不安を感じて聞いた。
「かなり減ってきました。」
聞けは2リットルの水は既に半分以上なくなっているという。そこで、手付かずだった1.5リットルの水を全てあげて「この水が半分なくなったら、あとは諦めて戻って下さいね。上には水ないので。」とアドバイス。
 これで、こっちの水も残り僅かになった。(200くらい)でも、3合目の甘露泉水まで1時間かからんだろう。とはいえ、水がないというのは不安なものだ。いつもは必ず1リットルのボトルひとつは手付かずで「必要なかったな」と思う。でも、実際に山では何があるかわからないし、このままのスタイルでいこうと再認識する。

 13時、甘露泉水到着。これでもかというほどグビグビ飲んでやる。そしてボトルも満タンにする。キャンプ場に戻った時点で、まだ最終のフェリーに間に合う時間だった。でも2泊のキャンプ料金を払っていることだし、あとはゆっくりテントで過ごそうと思う。

 夕方、ひとつミスした。水屋でラーメンを作る準備をしていた時、箸を忘れてテントまで行って戻ったほんの数十秒で、ラーメンを袋ごとカラスに持っていかれた。あれほど管理人さんに「食べ物から目を離さないように気をつけて下さい。カラスはどこかでちゃんと見てますから。」と言われたのに。

スポンサードリンク