山上ヶ岳

 前日の3時過ぎには駐車場に着いたが、駐車料金が1泊だと2000円するので、少し戻って道路わきの駐車スペースで就寝し、朝早く現地に再突入した。日帰りなら駐車料金は1000円になる。有数の観光地だろうから仕方のないことかもしれないが、1日の食費が1000円に満たない身としては少々厳しい。(駐車場という商売は、土地さえあれば最高に効率の良い仕事だな)

 管理しているお土産物屋さんはまだ開店前なので、封筒に1000円を入れてポストに放り込んで出発。時刻は5時30分。橋を渡り、すぐに森の中の登山道に入るが、その前に女人結界門がある。そう、ここは女性が踏み込んではならない場所なのだ。結界門の前にはこれまでの経緯が書いてあるので一通り読んでみる。ふむふむ。

 説明によれば、「修験道は修験者だけでなく地域の女性も信仰としてこれを守り伝承してきた」とある。しかしこれはちょっと無理のある説明ではないのか。公民として女性の地位が保障されたのは、たかだか戦後からの話。「壱千年あまりの時をかけて、宗教的伝統として作り上げてきたものであります。」の900年以上は、女性が口出しなどできない時代だったわけだ。若干過激になるが、イスラムのいくつかの国で女性だけが顔を隠すだの学校に行けないだのという実態を「信仰として女性を含め守ってきたものです」と言うのと同じだろうと思う。

 それでもこの土地を所有する人が「女性は進入禁止」というなら、それはそれで従わなければなるまい。ならば、ここを日本三百名山に選定すべきではない。女性も登れる稲村ケ岳を選定すべきだろう。今日の山ブーム、百名山ブームから三百名山を目指す人が男女問わず賑わいを見せる現代において、どちらかの性しか行けない山を「公益社団法人」が選定するとはいったい何なのだろう。仮に「三百名山から山上ヶ岳を外し、稲村ヶ岳を入れました。しかし、そちらは女性専用ですので、男性の皆様は三百名山ではなくなりましたが今まで通り山上ヶ岳をお楽しみ下さい。そこから稲村ヶ岳がよく見えますから。」と言われて、世の男性の登山愛好家の皆様は納得するのだろうか。

ここからは女性進入禁止
ぜひ一読し、これで良いのか考えて下さい

 心の中では相当に頭にきているのだが、それはそれとして山に罪はなく、修験の場としての歴史ある道を歩いてこよう。

 登山道は山塊を時計回りに大きく巻いて登るので、基本的に右が山、左が谷という形で少しずつ高度を上げていく。途中いくつかの茶屋があるので休憩する場所を探す必要もない。とても登り易い道だなというのが印象だ。登山道というより、長い長い参道と表現した方が良いだろう。たまに出てくる「深山のかおり」のホーローの板が気になるが、きっとこのあたりのお菓子だろうと思っていた。(どうやらお茶だったようだ)

 途中、水場にある祠の石像が盗まれたという文章を見た。盗んだ人に天罰が下って、不幸になっていることを強烈に祈る。(そうです、私は聖人ではありません。)

あれまー、盗んだ人は返しましょうね
時々出てくる休憩所

 参道の後半は尾根を通るので両側が切れ落ちている場所を歩く。(広いので怖くないです)このあたりでようやく山頂部が見えてきた。最後に岩の塊をいくつか越えると、「西の覗」という崖から上半身を乗り出す修行の場がある。物々しい安全鎖が石に打ち込まれていて、それを見ただけでひぃっとなる。(自分はこれを体験しないで一生を終える人間)

 さらに石段を登り、山頂に着くと大峯山寺という大きな寺が現れた。立派だ。ここでいったいどれだけの人が修行をしたのだろうと思うと、信心深くない自分でも心が引き締まる。寺の境内からほんの少し石段を登ると、笹の草原が広がり、山頂もそこにある。8時15分、登頂。

岩場もあり(とても短い)
ここから下を吊るされるのね
命綱ある
しっかり百名山の表示(一応ここは三百名山)

 おやっ? 百名山の看板があるぞ。ここは三百名山ではないのか? 大峰山はひとつの山ではなく、八経ヶ岳を含む山塊の総称を指すわけだから、これはこれで間違いはない。しかし、現在は誰でも登れる最高峰の八経ヶ岳が百名山に名を連ねている。女人禁制という化石のようなことを維持しながら「百名山だよ」と美味しい部分だけはいただき、麓の駐車場は高い料金を取り・・祠の石像を盗んだ人にバチ当たれと思ったが、実は山上ヶ岳にバチが当たって石像がなくなったのではないのかとも感じてしまう。うーん、危険もなく歴史もあり、とても良い登山道なのに、今日はネガティブな感情が優勢だな。

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 さて、下山しよう。稲村ヶ岳を経由するルートにすれば良かったかな、とも思う。しかし、すでに往復コースで登山届を出しているので、妙なリスクを犯さず大人しく元の道を下る。

 10時20分、駐車場到着。なんだかんだと文句も言ったが、良い山ではあった。さっ、次行こ次。

大台ヶ原

 山上ヶ岳を出て、本当なら1時間くらいで着くはずなのだが、国道309号の山越えが土砂崩れのため不通なのに気づかず、突っ込んでしまった。そこから大きく迂回して車を走らせ、結局13時に大台ヶ原駐車場に着いた。(ガソリンがそろそろ心配になってきた)

通行止めの影響で鬼の遠回り

 ここは誰が何と言っても間違いない百名山で、男女分け隔てなく山を楽しめる場所だ。しかも駐車料金は無料だし、ここは良いなあと感じる。(山上ヶ岳さんごめんなさい。まだこだわってます)

 大台ヶ原へは、大杉谷登山口からのロングコースがあり、こちらは山頂まで12時間を越える。しかし、大台ヶ原駐車場まで来てしまえば、ここから山頂までは標高差100m程度。まっすぐ行ってくるだけなら1時間半のコースだ。13時過ぎているがどう考えても遭難する場所はなさそうだし、軽装の観光客が次々とスタートするので、自分も掟を破り、午後から登山開始。いや、登山というにはあまりにも平坦だ。ハイキングと呼ぼう。

 大台ヶ原は、その名の通り広大な大地だ。これは、美ヶ原同様に山頂というものに大した意味はない。それでも一応は最高点の日出ヶ岳が百名山のひとつとなる。そこを目指すのに、大小の周遊コースと往復の最短コースがある。午後1時を過ぎているので、大きく回ると4時間近いようなのでこちらはパス。小さな周遊コースをハイキングする。ちなみに、これらのコースとは別に、西側には予約制で人数調整をしている区域がある。こちらは予約してないので行かない。

 歩いている途中の看板で知ったのだが、昔は苔むす森林だったのが、伊勢湾台風で木が倒れ、苔が笹に変わり、鹿の食害もあって荒れてしまったのだそうな。歩く分には笹原は気持ちが良いのだが、喜んでばかりもいられない環境破壊の結果なのだな。コースの詳細は下に写真を並べておくので見て欲しい。

山頂

 山頂に近づくと、笹原の中の木道(階段)を進む。遠くに海が見えて気持ちの良いコースだ。山頂には展望台があり、多くの人が写真撮影に打ち興じていた。こういう場所ではカメラマンになることが多く、数組のカメラを預かりパシパシ撮ってあげる。(最近はスマホを渡されることが多いな。デジカメもそろそろ化石になりそう)15時20分、駐車場に戻る。2時間のお手軽ハイキングでした。

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