7月4日

 トムラウシ下山後、トムラウシ温泉に入り、そこから車を120キロ走らせて「道の駅 樹海ロード日高」に到着。今日はここで寝る。なんとなく施設の展示を見ていたら、トムラウシで一緒だった声出しおじさんと再会。彼もここで車中泊ということで、焼肉屋に繰り出しラム肉を肴にビールを飲む。彼はチロロ林道から幌尻岳を目指す予定だったが、雨がひどくなりそうなので今回は諦めるつもりだという。自分もどうしようか迷う。

 7月5日、6日

 天気予報を見ながら新冠町周辺をうろうろする。どうやら7日から入れば8日は晴れそうだと判断し、7日にポロシリ山荘に向かうことに決定。「道の駅サラブレッドロード新冠」に2泊。

 7月7日

 いよいよ幌尻岳に向けて出発する。まずは駐車場となるイドンナップ山荘まで40キロの未舗装道を走ることになる。道はかなり悪く、道路には大きな水たまりが点在する。その水たまりが深く、周囲の様子から尖った砕石もありそうでパンクのリスクもけっこうありそうだ。ここは慎重に走るしかない。時速は15キロ程度。結局この林道に2時間半を要したが、パンクしなかったので良しとする。

砂利道スタート(ここはまだ状態が良い)
イドンナップ山荘
そのうち、こっちのコースがメジャーになるかも 沢こぎないし

 イドンナップ山荘前には車が10台ほど停まっている。ということは10~20人が幌尻岳に入っているということだな。マイクロバスが一台あるから団体さんもいるのだろう。今日は普通に林道を歩くだけなので、誰か来ればいいなあとしばらく待ってみた。しかし、30分待っても誰も来ないので諦めて出発。

 8時に出発し、今日は19キロの林道をひたすら歩くだけ。もともと自動車も走れる林道なので広く、しかもイドンナップ山荘までの道よりも状態が良い。車に削られていないからだろう。念の為時々「おーい」と声を上げながら歩くが、クマの匂いも気配も感じなかった。(獣かお前は)

最初のゲート
橋についてる2番目のゲート
こういう道を19キロ歩く
着いた

 12時40分、新冠ポロシリ山荘到着。雨模様の1日だが幸い激しく降られることなくここまで来た。中では若いお兄さんがひとり、薪ストーブと戦っていた。「なかなか火がつけられなくて。こういうの得意ですか?」と聞かれてバトンタッチする。おにいさんは山頂で雨に降られ、ほかの皆さんに「ストーブつけて待ってます」と行って下りてきたのだが、火がつかなくて焦っていたのだった。見れば大きな薪にティッシュで火を点けようとしていた様子。これは無理でしょと思ったがあまり追及せず、ナタで薪を細く割り、井げたを組んで点火し、それから太薪を焚べてという手順を踏んだ。きっとお兄さんは次の機会にはストーブ奉行になれるだろう。(ただ火をつけただけなのに救世主のように崇められ、結局3日間ストーブ担当になってしまった)

 午後からは、下山してきた団体さん(年配のお姉さま8人+若いお兄さんのガイド)、個人数人、それから今日やってきた数人で、山荘内はさらりと満員状態になった。そういえば、歩いてくる時に誰ともすれ違わなかった。ということは昨日(6日)に登った人はいなかったということかな。夕方は何人かとプチ宴会。(というより夕食時に焼酎をいただきちょっと飲んでお喋りしたくらい) 百名山を周っていて、ここで最後という人が2人いた。百名山ブームの凄いことと、幌尻岳が難関であることを改めて感じる。

 夜はけっこう寒いでのストーブを付けっぱなしにして寝ることにする。自分は1階に陣取り、時々起きては薪を焚べるというルーチンで、ちゃんと寝たのかどうか自分でもわからない。

 7月8日

 関係ないけど今日は誕生日。誕生日に幌尻岳の山頂にいるというのもなかなか味わいがある。団体さんが意外に早起きで、4時には動きだしたので合わせて自分も活動開始する。5時に団体さんが林道にイドンナップ山荘に向けて出発した。幌尻岳には同じく5時に一人登って行った。自分の出発は5時半。どんよりした曇り空だが雨も降っていないので、山頂で晴れることを期待して決行する。コースタイムで8時間ほどだから2時くらいには戻ってこれるだろう。

団体さん、お疲れ様でした(遠くに山見えてる)
スタート
笹藪刈ってくれてありがとう
道が消えたかと思ったら、ここに突入なのね
きゃー、薮深い

 昨夜までの雨で登山道の状態は悪い。しかも小雨が降ってきた。でも体調はすこぶる良いのでとにかく登ってみる。登山道は途中から笹藪の中に入る。左右が笹藪という道ではなく、笹藪の中に突入するのだ。しかも傾斜もそこそこあり、笹藪を踏むから滑る。両手をフルに使って笹を掴んで進むしかない。ここでクマに出会ったらスプレー噴射は難易度が高いな。でも先に一人行ってるというのがとても有り難い。(ソロ登山と言いながら結構な他力本願である)

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 笹藪こぎを1時間ほど経て、ようやく普通の登山道になる。砕石ごろごろの沢を横切り、急斜面をジグザグに登る。この場所は晴れていれば美しいだろうなあと体に染みついた不運を呪いながら、でも体調は万全でひたすら登るだけ。もう今日は眺望など望めないだろう。幌尻岳の看板だけ写真に収めて帰ってこようと気持ちを切り替えた。雨の中カメラを出すのも億劫で、このへんの写真はほとんどない。

一度沢を越えます
ジグザグに高度を上げる(雨降ってる)

 9時30分、幌尻山荘からのルートと合流。つまり尾根に出た。ここまでくればもはや着いたも同然でほとんど登りらしい登りもなく9時45分に山頂に着いた。山頂には先行していたおじさんが休んでいた。天気が良ければ戸蔦別岳まで足を伸ばし、7つ沼カールも見る予定だった。(実際、登山届にはそのコースを書いて提出している) でも、この雨の中歩いても意味がないと判断してすぐに下山することにした。もう少し先に行ってみるというおじさんと別れてすぐに下山開始。

尾根に出た
雨の為、花を愛でるゆとりなし
ただの証拠写真(自分の姿も撮ってもらったが、それは出さない)

 幌尻山荘分岐付近で昨夜一緒だった女性とすれ違う。夫婦で来ていたのだが、途中で諦めた夫を見捨てて来たという。そしてすぐ後ろにもう一人の女性。こちらも連れの男性が体調悪く、一人で登って来た。

女性「連れが途中で待ってるのですが、私は先の女の人と一緒に登って一緒に帰るから心配しないで先に戻って下さい。と伝言お願いできますか?」

私「わかりました。気をつけて。」

 この状態をどう解釈すればいいのだろうか。雨も降ってるし結構寒い。こんな状態で2つのペアがそれぞれバラバラになってる。これは、あまり良い状況ではないのではないか。一瞬トムラウシの遭難事故が頭をよぎる。でも、縦走でなく皆が元の山荘に戻るわけだから、苦しければ無理せず登頂を諦めて相棒を待つというのも正しい判断なのだろう。(ここはたぶん意見の分かれるところかな。)それにしても今日は、女性が強く、男性が体調を崩す日のようだ。自分も気をつけよう。

 突然自分に役割ができたので、彼女の相方を見逃さないよに注意しながら急斜面を降りる。いたいた。はるかに下をゆっくりと登ってくる。合流してメッセージを伝えると「それなら安心だ」と言って彼もそこから下山を始めた。待ってるとは言ったものの、一人で行かせた判断がどうだったのか迷い、ゆっくりでも登ろうと思って動いたのだそうだ。しばらくそのおじさんと一緒に話しながら下山。そして、藪漕ぎを終わったあたりで残りの平地は先に行かせてもらった。早めに戻り、ストーブに火を入れるためである。

 13時、山荘に到着。もうひとりの体調不良者が既に戻っていて、ストーブも炊いてくれていた。少し遅れてもう一人の体調不良のおじさん到着。まずはひと安心だ。男3人でコーヒーを飲みながら火のそばで話し込んでいると、3時前には女性2人組とソロの男性が戻って来た。これで本日の登山者全員が無事帰還したことになる。ちなみにもうひとつのコースである幌尻山荘コースからの登山者はゼロだった筈。(今シーズンはコロナ対応で山荘そのものが閉鎖している。)

 山荘は、林道を歩いて来た2人(明日登頂予定)を加えて8人となった。昨日の混み具合が嘘のようだ。

7月9日

 今日は天気が良い。1日ずれてたら良かったのになあという後悔もあるが、登山届を出さない状態でもう一度登ることはしない。出そうにも電波が届かないのだ。登ってしまえば何の問題もなく晴天の幌尻岳を堪能できるのだろう、きっと。でも、こういう場面で往々にしてトラブルは発生するということも知っている。(特に自分の場合は) 特に百名山全てを制覇しようという野望もないのだが、今回は「幌尻岳行ったもんねー」という事実だけで満足して帰るとする。

帰る日になって、天気良し

 7時過ぎに山荘を出発。明け方に山に向かったおじさんがギリギリのタイミングで薪を多量に投入してくれたおかげで、そのままの状態で山荘を無人にするわけにも行かず、火が落ち着くのを待ってから帰還することにした。他のみなさんもほぼ同じタイミングで出発しそうなので、6人一緒に林道を戻ることにした。聞けば若いほうのカップルは来る時に林道でヒグマを見たという。(おいおい、それ早く言ってよ)

 流石に6人グループの前に現れるクマはいないようで、「おととい、クマいたのここでした」という話を聞きながらゆっくり歩いて11時半にイドンナップ荘に到着。3日間一緒だった皆様とはここでお別れだ。40キロの林道、お気をつけて。パンクなんかしませんように。

 ところが、走って早々に自分の車がパンクしてしまった。どうやら水たまりの中に尖った石が潜んでいたらしい。緊急用の細いタイヤに交換し、ここからは時速10キロにも満たない超低速で走る。未舗装の荒れた林道はまだ30キロ以上続く。もはや交換するタイヤはないので、もしもう一度パンクしたら、今度は自転車を組み立てて走るしかない。(しばらくは電波が届かない場所が続く)

パンクしたああああっ

 幸い無事に舗装道に出るが、最寄りのガソリンスタンドは新冠市街にしかない。さらに20キロほど走らせてスタンドイン。しかし、タイヤの損傷が予想以上に深刻で、タイヤを注文しないといけないから直せないと言われた。さらに車を走らせ、静内のオートバックスでタイヤ交換となった。

 ところが、オートバックスで「ブレーキパッドがほとんどないですよ」という指摘を受けてしまった。そういえこの1週間、なんだかタイヤ付近からカラカラと異音がするなあ、砂利道で何か挟まったのかなあとは思っていた。しかし2月に車検をしたばかりの7月なので、まさかブレーキパッドが減ってるとは思いもしなかった。(よく考えたら、この5ヶ月で九州から北海道まで1万キロ以上走っている。これはディーラーが悪いのではない)

 その後、苫小牧のディーラーに連絡し、至急のブレーキパッド交換を頼むことになる。

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