挑戦1(6月12日)

 百名山の中でも最難関のひとつと言われるのが飯豊山。山を趣味にして、山形に住んでいるのに足を踏み入れていない百名山。近くにあるのに何故行ってないかというと、自分には無理なのではないかと思っていたからだ。でも、山登りを始めて6年になる。そろそろ行っても良いのではないかと思い、とりあえず挑戦してみる。

 6月11日(日)午後に山形の家を出発。山頂までの時間が一番短い大日杉登山口に移動する。駐車場には車が数台停まっていたが、暗くなる前にほとんどが下山し、残るはもう一台だけになった。きっと今夜はどこかの山小屋泊なのだろう。今日はここで車中泊し明日の早朝スタートする。

大日杉登山口
こういう道好きかも
歩いてすぐに現れる鎖場

 12日、4時起床し朝食と準備を済ませて4時45分出発。山頂まではコースタイム7時間弱なので、もしかしたら日帰りも可能性も残すため早めのスタートにした。(もちろん水も含めて小屋泊の装備も入れてある) 大日杉小屋を横目に森に入り、15分ほど進むと急登が目の前に現れる。これを登れば尾根に出るので、斜度としてはここが一番大変なところだ。そんな大変な場所がスタート早々というのは考えてみれば有難い。鎖を握りしめて崖のような急登に取り付く。急ではあるが特に危険は感じない。

 急登を登ったら、あとは地蔵岳まではじわじわと高度を稼ぐ。先は長いのであまり無理しないでゆっくり行く。5時50分、長之助清水に到着するが、水はまだ十分あるので先に進む。このあたりから何故かお腹が痛くなってきた。何だろ? 朝はすこぶる元気だったし心当たりはない。そのうちに治るだろうとそのまま登る。

尾根を歩く(お腹痛くなってきた)
地蔵岳見えた

 7時50分、地蔵岳到着。コースタイムよりも若干速いくらいのペースで来ているので無謀な挑戦というわけではなさそうだ。しかし腹は相変わらず痛い。どうしようか迷ったが「調子が悪い時は無理をしない」という基本を守り、ここで撤退することにした。

 撤退と決まったら急ぐ必要もない。腹はおかしいがまだトイレに行く必要もなさそうだし、地蔵岳山頂で暖かいカフェオーレを飲みながらパンをかじる。そして雲に隠れた飯豊本山を見ながら休憩をたっぷり1時間とった。考えてみれば登山口から地蔵岳まで標高差1000m近い。ここから飯豊本山までは500m程度しかないので、すでに3分の2は来たことになる。距離的にはまだ3分の1だが。逆にここからが楽しい道になる筈だ。ちょっと悔しいが、まあこれも仕方がないだろう。

地蔵岳山頂より
途中撤退ならこんなに荷物いらんかった

 9時、下山開始。腹の調子はまだ回復していないが、心肺と足は元気なので下りは早い。途中の長之助清水で水を汲んでいく。(必要はないのだが、この水も飲んでみたかった)

 11時少し前に下山。とても残念な1日になったが、きっと神様が「今日はやめとけ」と助言してくれたのだろう。

 腹の調子もだいぶ良くなったし、このまま家に帰るのは悔しすぎるので、喜多方まで足を伸ばしてラーメンを食していくとする。

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挑戦2(6月20日)

 2度目の挑戦は前回と同じように前泊し、20日早朝出発する。今回は4時過ぎにスタートだ。お腹も含めて体調は良い。今日は腹痛起きるなよろ念じて登る。2度目になると道の様子もわかっているのでスムースだ。最初の急登も問題なくクリアし、順調に進む。地蔵岳までの道も、多少汗をかいたものの前回よりさくさく進んだ。

 6時35分、地蔵岳到着。前回より30分早い。山頂で給水と休憩をとったら先に進む。地蔵岳を一度100mほど下り、尾根伝いに大小4つの小ピークをる。ピークといっても数十mていどなので特に問題はない。

地蔵岳より

 途中、目洗清水(雪渓で水は汲めない)付近を通った時、かなり強烈なケモノ臭がした。これはクマの可能性があるなと緊張してスプレーをセットする。そして鈴(ストックのストラップに付けてある)を勢いよく振ってみた。近くの薮がガサガサと音を立てて、その音は尾根から下の方に移動していく。どうやら逃げたようだ。襲われないで良かったと一安心。

 ソロ登山の良さは「自分のペースで歩き、いつでも自分の意思で予定を柔軟に変更できる」というのが利点だ。この点ではソロがグループに比べて遭難のリスクが高いとは思えない。もちろん、滑落や体調不良、クマとの遭遇や道迷いなど、ソロの方が圧倒的に高リスクな面もある。特にクマの恐怖についてはグループが羨ましいなあと思う。(不安感がかなり軽減されそう)

 見てないけどおそらくクマに遭遇しそうになったので、しばらくはクマスプレーを持って先に進むことにする。急登のない尾根なので特に不都合はない。

ええやんええやん

 幸いその後クマに会うこともなく高度は1700mを越え、前方に種蒔山(1791m)が大きく見えてきた。こちらには登らず右に迂回し、雪渓(それほど危なくない)をひとつ越えて少し登ると、切合小屋が見えてきた。しかし、いよいよ主稜線に出る手前に巨大な雪渓が現れた。間抜けなことにアイゼンもチェーンスパイクも持ってきてない。6月下旬の一番陽が長い時期とはいっても豪雪の飯豊じゃないか。自分のバカバカバカ・・・。雪渓の縁を歩けば行けなくはなさそうだし、実際いくつかの足跡もある。でも、ここは登山道外れてるよね。踏んではいけない場所だよね。

アイゼン持ってこない自分のバカ(けっこう急です)
切合小屋見えてるのになあ

 体は元気だし時間も十分なゆとりがあるけど、ここで撤退を決意。無理すれば行けたとは思う。でも下山の時に無事に降りれる自信がない。谷底まで滑って途中の岩に激突する未来しか浮かばないので、安全を優先させる。

 2回目の挑戦も結局山頂に届かず終わってしまった。続けて登頂できなかったということは現段階で無理なのかもしれないと自分に言い聞かせ、今年の飯豊はこれで終了とする。また来年チャンスを伺おう。

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