人形山登山口への道は険しい。山頂への道ではなく「登山口への道」だ。国道から登山口に向かって舗装道を走ると、しばらくして「登山道入口 この先300m」という標識が現れる。これを見れば「ははぁ、300m先に登山口の駐車場があるのだな」と普通は思うだろう。ところが砂利道の300m先にあるのは山に向かって登る道の分岐点で、そこから7キロの荒れた道が続く。大きめの礫がゴロゴロと転がりパンクのリスクのある道を、とにかくゆっくりゆっくり進む。本当にこの道で良いのだろうかと不安になりながらも、ダートと時々現れるコンクリートの道を進むしか無い。結局、1時間近くノロノロと車を走らせた(いや、歩かせた)先に、登山口が現れた。

登山口そのものは東家があったりして整備はきちんとしているので、なんとかここまでの道がもう少し整備されることを願いたい。何はともあれ無事に着いたので、ここで車中泊する。

林道は酷かったが登山口そのものはきれいだ(トイレはない)
水も出そうだが・・・よくわからない

 翌12日朝、4時に起床し朝食を済ませ、5時丁度に出発しようと東屋で準備していたら、駐車場の下の方から「グロロロロ」とバイク音みたいな唸り声がきこえた。うわっ、これは熊だ。「おーい」と声を出してみると再び「ゴロゴロロ」と返事してきた。怖いので一旦車の中にリュックとストックを放り込んで避難する。そして音がした下方に向かって100mほど車を走らせてみる。実際に熊の姿は見えなかったので、駐車場に戻って登山開始。スタートは5時20分となった。そういえば昨日に金剛堂山で会ったカップルが「人形山は熊いますよ。声聞いたし」とか言ってたっけ。ビビったので最初は熊スプレーを手に持って歩き出した。(因みにスプレーはショルダーストラップにつけてあり、3秒で噴射できるようにはしている)

5時20分、熊の声にビビってスプレー持ってスタート
前半はこんな感じ

 しばらく緩い登りを進んだが、熊の気配(音や臭い)もなく細い稜線でもあるのでスプレーを胸のホルダーに戻して進む。山頂までの距離は長いが、しばらくは緩い登りなのであまり汗をかくことなく気持ちよく歩ける。1時間ほどで第一休憩所、さらに40分後に第二休憩所でそれぞれリュックを下ろしてしっかり休んだ。第二休憩所には大きなドウダンツツジがあるが、花の時期でないのがちょっと残念だ。(そういえば、花を狙っての登山というものをしたことがない)

時々休憩スペースが出てきて、ペース配分がし易い

 第二休憩所からは少し傾斜がきつくなり、汗が出てくる。それでも頑張るのはほんのひと時という感じで、いきなり視界が開けて鳥居が出てきた。快晴の青空の下、ここで人形山の山頂がきれいに見えた。まだまだ距離はあるが、だいぶ高度を稼いだので、ここからは楽だろう。

 鳥居のある小ピークから一度下りて小さく2回登り返し、このコース1番の急登を踏ん張ると、主稜線に出る。時計は8時20分、ちょうど3時間かかってここまで来た。それまで山の陰で見えなかった白山が見事に見えた。白山は医王山や金剛堂山からも見えていたが、だんだん近づいてきて嬉しくなる。そして30分ほど進むと山頂だ。

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宮屋敷跡(鳥居しかない)
左は三ヶ辻山 紅葉がきれいだとあるが、初夏だから行かなーい
稜線手前に急登あり(写真ブレてるな)
8時20分、稜線に出た
あと少し
山頂きた 白山がだいぶ近い

 山頂は白山を正面に休憩場所が整地されている。ベンチは少ないが、思い思いに地べたに座ってお昼にするのも良い場所だろう。
 ちなみに、人形山は「新日本百名山」のひとつだ。岩崎元郎さんという登山家が選定したもので中高年の登りやすさを加味して選んだという。深田久弥さんの「日本百名山」に陰に埋もれている感もあるが、人形山頂の看板にはしっかり「新日本百名山」とある。きっと選ばれて鼻が高かったのだと思う。
 そういえば、自分の百名山といったらどうなるだろう。実績からすると日本アルプスの山々を完全スルーして北海道の山々が多くなるに違いない。(アルプス怖くてほとんど行けてないのだ)

 しばらく休んでいたら、年配の男性が登ってきた。話を聞くと自分よりも1時間遅れてスタートしたという話。リュックも年季が入っていてベテランのようだ。明日は大笠山に行くという。きちんとトレーニングを積んで登り続けている人に比べて、冬場に何もしないで衰えるままにしていた自分が恥ずかしい。今度の冬はしっかり鍛えようと初夏の山の上で誓う。

 50分ほど山頂に滞在し、9時40分下山開始する。鳥居のある場所までは登り返しがあるが、下りは快調そのものだ。足を再び痛めることを恐れ意識してゆっくり歩き、それでも12時15分には登山口に戻った。車で靴を脱いでいると、程なく山頂で会った男性が下りてきた。流石に速い。

 それにしても、登山開始が遅い人がいて心配になる。今日も最後にすれ違った人は11時過ぎに第二休憩所の手前だ。けっこう汗をかいてふうふう登っていたから自分と同じくらいの力だろう。自分に当てはめると下山は4時半くらいだろうか。もちろんまだ日暮には早い時間だし、普通は問題ないのだろう。しかし、午後から天気は悪くなるという予報も出ているし、自分にはちょっと無理だなと感じる。ゆっくりスタートして大丈夫な人はそれでいいのだろうが、自分は早く出て早く下山し、明るいうちに風呂に入って次の登山口に移動する、というパターンで行くのが不安がなくて良い。こんな動きができるのも、時間のゆとりがある自分の有利な点だな。

 下山しても、最後の難所が待っている。林道だ。山頂で話した男性も「林道が1番の難所でしたね。」と話していたが、完全同意だ。
 下山後の風呂は、五箇山の「くろば温泉」。こちらもなかなか良かった。

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