6月5日の夜は「道の駅 西山」で寝る。ここは元総理の田中角栄を大々的にPRしている場所で、田中角栄記念館、そして「角さんの台所」というネーミングのレストランまである。確かに思い切った政策で多くの評価を得ている政治家だが、一方で様々な汚職に手を染めた人物としても名を残している。地元としてもひとつにまとまれない気がするのだが、逆にここまでしっかり観光資源として利用するのもまた天晴れである。

 がらんとした駐車場の一角では車2台が運転席が向かい合うように並び、窓越しにベテランらしきおんちゃんが説教と激励をしていた。状況はわからんがきっと不甲斐ない(と思われる)新人に言いたいことがあるのだろう。でも、あのシチュエーションではどんな気の利いた事を喋っても心には響かんだろう。残るのはおんちゃんの「俺は良い事言ったなあ」という実態のない自己満足か。まあ良い、気にしないで寝るとしよう。

 翌6日は晴れ。朝5時半に道の駅を出発し、大平登山口駐車場に向かう。特に道に迷う事なく到着したが、駐車場に車は一台もない。コースがたくさんある山では、駐車場が空であるというのは少々心配になる。もしやほとんど人の入らない荒れたコースなのだろうか、などど想像してしまうのだ。(もっとも自分の行動が普通より早いので、下山したら満杯だったという事も多い)

 駐車場には米山のパンフレットがあり、一枚頂く。とてもよくまとめられた良いパンフである。残念なのが柏崎市側の記述しかないことだ。山というのは県や市町村の境にあることが多く、時として案内板やパンフレットも反対側を無視した記述になっていることも確かにある。でも山に登る人からすると「ちょっと心が狭いかなあ」と感じてしまう。是非とも市町村が協力してほしいところだ。
 少し文句を言ったが、パンフのおかげで新たな発見があったのも事実。貴重な予算と手間を使って無料で配布してくださった事には感謝したい。

 6時半スタート。曲がりくねる林道をショートカットするように登山道が切られていて、まっすぐ進むと再び林道に出る。林道を少し歩くと本来の登山口が現れた。登山口には「山頂土上げ運動」の看板があり「備え付けの土嚢袋に土を入れて山頂まで運んでください」とある。どんなすごいものを担がせるのだろうと恐る恐る箱を開けたら、旅館でタオルを入れるような小さな巾着袋があった。うん、これならなんとか持てそうだと土を詰めて、ひと袋だけ協力する。重さは2キロ程度だろうか。

なんだこれ?
土を運ぶのか
持っていってあげようではないか

 7時に登山口をスタート。コースタイムが2時間半とあるから、まあ10時くらいには着くだろうと検討をつける。昨年はコースタイムの8割くらいが自分の標準ではあったが、今はまだリハビリ期間で、しかも昨日膝を痛めている。ゆっくり登るのだ。
 登山道はこちらもきれいに整備されている。若干階段が痛んでいるところもあるが、気持ちよく歩ける道だ。道は良いのだが、こちらの膝の関係で一歩一歩確かめるように歩くから、時間がかかる。しかも2キロの土を加えてリュックが重い。今日は30分ごとにしっかり休もうと早くも決意する。

 やや急な坂をひいひい言いながら登り、7時55分に広場に出た。ここでようやく山頂と、そこまで歩くであろう左カーブの稜線が見える。ここからしばらくは緩斜面のようだ。息を整えながら平坦な道を進み、再び上りになる。ここで後から来たおんちゃんに抜かれる。おんちゃんのリュックはとても小さく、おそらく10キロを超えている自分のに比べて楽そうだなあと思うが、心配性の自分はこれが精一杯だ。
 途中に「711米峰」という海が見える展望スペースがあり、ここで休憩。遠く西に雪を被った山々がうっすらと見えている。きっと白馬あたりだろう。

スポンサードリンク
休憩スペースは確実に利用する
はいっ

 せっかく711mまで登ったのに道は下る。ほんの数十mなのにかなり応える。ここから道はやや険しく急な場所もあり、小さな階段なども出現する。もはや足は痛く荷物は重く息も上がり、なんとも情けない状態である。それでも進んでいればいつか山頂に着くだろうと当たり前の事を言い聞かせて進むしかない。途中腹が減ってパンを一個補給したりしながら、9時半過ぎに山頂に辿り着いた。到着したというより辿り着いたという表現が正しいだろう。まずは持ってきた土を所定の場所に放り込む。たった2キロ(目分量)なのにリュックが異様に軽く感じる。これくらい違いを感じるということは、きっと自分の許容量がこのあたり(たぶん10キロ少し超え)なのだろう。

やっと土の重みから解放

 独立峰だけあって山頂の景色は良い。少し霞んでいるが、日本海が一望できて良い山である。ここまで1人に抜かれただけだったが、別ルートから登ってきた人で賑わっている。少々早いがここでお昼とし、残りのパンを2つ頂く。今日はお湯を忘れなかったのでカフェオーレ付きだ。
 山頂には三角点があるが、もうひとつ、明治時代に設置された原三角点なるものも存在する。パンフレットによればこの「原三角点」なるものは全国に3か所しか残っていないらしい。特に三角点に思い入れはないが、まずは良いものを見たと写真に収める。

三角点マニアじゃないけど、一応パチリ

 珍しく1時間ほど休憩して下山開始。下りになると左膝を曲げて右足を下ろした時にに激痛が走る。この状態で最後まで行くのは困難に思われたので、林道の終点までショートカットし、あとは林道を降りるルートを選択した。このルートは登山口の地図で知ったのだが、先に登ったおんちゃんがたまたまそのショートカットを下るのを見つけて「ははあ、ここも大丈夫なんだな」と確認もしていた。尾根道から林道までの道はかなり急登をロープで降りる場所があったり、道も狭かったり、やや危険でもある。しかし、ほんの短い区間を我慢すればあとは勾配の緩い舗装道であり膝の負担は無い。

林道まではちょっと狭い
帰りは膝の負担を避けるべくゆっくり歩く
掘ったの誰かな?

 11時10分、林道に到着。駐車場に戻ったのが12時40分なので、かなりの時間を要したのも確かだが、実質的な登山は11時で終了となった。ちなみに林道は通行止めで、所々落石もあり一般車が入るのは危険である。道端におそらく猪が掘ったのだろうと思われる掘り跡があちこちにあり、林道であるが既に人の領域ではないのだろう。猪も本気になると命に関わるのでクマスプレーを右手にぷらぷらさせながら歩いた。(結果、何にも遭遇せず)

 下山後は「長峰おんせんゆったりの湯」に入り、広間でゆっくりと膝と足のストレッチ。単なる筋肉痛ではなく何かしら筋か関節をおかしくしたような痛みがあり、今後の山行が不安である。

http://www.kisnet.or.jp/~yuttari/

スポンサードリンク