久々の百名山である。しかも白山は西日本で1番人気とも言える山と言える。1番人気という根拠は、シーズンになると直近の駐車場は駐車禁止になり、手前からシャトルバスを利用するしかなくなるのだ。こんな対応になる山は全国的にも少なく、これだけで人気の高さが伺える。

 しかし、6月のこの時期は自家用車の制限もなく、別当の駐車場までダイレクトに行くことができる。気候も考えると、花には若干早いのが難点ではあるがある意味一番上りやすい時期だろう。(もっともシーズンに入っても平日は規制外のようで、年中暇人の自分には関係ないとも言える。あくまで一般論として。)
 白山の難易度はというと、水が尽きそうになって撤退した大笠山とほぼ同じと言って良いだろう。累積標高は大笠山の方が100mばかり多いが、距離は白山の方が3キロほど長く、コースタイムの少しだけ白山が長い。しかし、白山には「水場が確実に当てになる」という大きなアドバンテージがあり、きっと大笠山のように撤退することはないだろうと思われる。

 17日に経ヶ岳に登り、翌日は天気が今ひとつなので「恐竜博物館」を見学しながらだらだら過ごす。そして午後になって別当出合の駐車場まで移動してきた。今日は火曜日で、登山当日は水曜日になる。にも関わらず、駐車場には少しずつ車中泊組が集まってきた。さすが百名山である。

 19日朝、4時過ぎに起床。既に駐車場の上の段は満杯で、早くも鈴の音を響かせてスタートした人もいる。午前中いっぱいは強風で状態が悪いという予報だが、天気そのものは良いので予定通り出発する。

平日なのに車の数 さすが人気の百名山

 駐車場から10分ほど階段を登り、別当出合登山口に出る。Xなどの投稿で何度も見た石積みの標識が目の前にあり、ようやく来たのだと気分が高まってきた。出発前にトイレに行き、水をたっぷり飲んで、4時50分スタート。最初は吊り橋だ。きちんとした吊り橋だが、怖いものは怖いのでおっかなびっくり歩いていたら、後ろからどんどん歩いてきた女性に追いつかれた。橋を渡り切ってから道を譲り、ここからはゆっくり歩く。

自分的難所
この道作るの大変だったよね

 道はとても良い。きれいに整備してあり、急なところは石積みの階段が設えてある。古い歴史を持つ信仰の山だけに、長い年月をかけて整備してきた様子が伺える。(しかしこの石段、作るの大変だったろうなぁ。)

 5時30分、最初の避難小屋がある中飯場にきた。距離からすると4分の1来たことになる。ここは水がしっかり出るのでたっぷりいただく。(でも、あまり汗もかいてないので、コップ1杯のみ)この先の避難小屋は水がまだ出ないので、次の水場は4.5キロ先の室堂になる。

中飯場 ここは水が出た

 道は相変わらず林間で眺望はないが、所々木が途切れて前方が見えるようになる。途中には巨石や手取層群の礫岩(ここから恐竜出たんだよね)が見られたりするので、地質岩石マニアなら興味を持って歩ける道だ。

甚之助小屋(6:40)

 6時40分、甚之助避難小屋に到着。こちらは開山と同時に開けるとのことで、小屋自体も閉じていて水も出ない。(距離的には中飯場よりもこっちの水場を開けて欲しいのだが、まあそれでも他の山に比べたら文句は言えない。)ここまで来ると吹き曝しの強風でかなり寒い。小屋の裏側で風をよけて少し休憩する。目の前の別山がとても綺麗だ。

 甚之助小屋からは見晴らしの良い登りとなる。途中、小さな雪渓を横切る場所が2ヶ所あったが普通に歩けるレベル、時々花の写真を撮りながらゆっくり進む。「十二曲り」という石畳の急登を登ると、もうすぐ黒ボコ岩というところで「延命水」という水場が出てきた。なあーんだ、ここにも水場あったのね。若干水の量は少ないがとりあえず手のひらに採って一口だけいただく。(後日、一口で3年長生きするという記事をみつけた。3年毎に訪れてこいつを頂けば理論上死なないことになる)

水場あったんかい

 黒ボコ岩に出れば道は弥陀ヶ原に入り、気持ち良い木道歩きが楽しめる。しかし風が強い。午後からは少し良くなる筈だが時刻はまだ8時、山頂もきっとすごいことになってるだろう。
 弥陀ヶ原を通過したら、ほんのひと登りで室堂だ。こちらも別当出合同様にたくさんの投稿で見たお馴染みの場所だ。まだ風が強いが天気そのものは良い。山頂が青空を背景にくっきりと見える。このコンディションが変わらぬうちに登ってしまおう。ほんの少し休んだで8時20分に室堂を出発し、こちらも石畳と石段の整備された道(参道と表現すべきか)を歩き、9時ちょうどに山頂に着いた。

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室堂きた! 山頂がくっきり
9時ちょうどに山頂

 山頂ではしばらく写真を撮ったり、撮ってあげたり、奥宮で煩悩成就祈願を行ったりして過ごす。空気がぱりっとしていて透明度が高く、今日は御嶽から乗鞍、そして北アルプスの山々が全て見えた。今日は完璧な山頂と言える。ゆとりがあれば大汝峰にも行くかと思ったが、寒いのでまっすぐ下りて室堂でゆっくり休むことにした。(さすが「へなちょこ」を自認するだけのことはある)

 山頂を下ってたら、若い女の子(弥陀ヶ原で追い越した)が登ってきた。背中に長い棒状のものを袋に入れて背負っていたのが気になっていたので声をかけてみた。

「こんにちは、その背中に背負ってるのは、刀か何かですか?」

「そうです、木刀がはいってます」

そのお姉さんは丁寧に袋から木刀を出して見せてくれた。いやいやそこまでしなくていいよと思ったが、「剣道が好きで、山頂に行ったらそこで素振りの稽古をする」と説明してくれる。どうも日本語のイントネーションが違うなと思ったら、アメリカの女性であった。日本に来ては馴染みの道場で稽古しているらしい。木刀1本持って山に登るって、ちょっと怖いけど素敵。一緒に登って写真や動画をたっぷり撮ってあげたくなったが、あまり出しゃばるとストーカーっぽいので「山頂に人がたくさんいるから、いい写真撮ってもらってね」とだけ話してお別れ。まあ、木刀は銃刀法には抵触しないし、稽古のためという明確な目的をもっているからきっと大丈夫でしょ。山頂もそんなに狭くないし。

室堂まで下って休憩

 室堂では、ようやく開いた受付のお姉さんに「クロユリってこの辺に咲いてますか?」と聞いてみる。実は前日に一ノ瀬ビジターセンターに立ち寄った際、「今年最初のクロユリが一輪咲きました」と写真が掲示されていたのだ。室堂ビジターセンターではその情報が共有されていないようで、「それならどこかで咲いてるのを見つけた人がいるのかなぁ。神社周辺にあるのですけど、まだ花の時期ではないし・・・」という返事。とりあえず室堂のあちこちを探して周ったが、結局見つけられなかった。

 10時30分、室堂の水場でボトルを満タンにして下山開始。下りは「観光新道」という尾根ルートで、こちらは途中に水場がないから、念の為たっぷり飲んで腹にも水分を蓄えた。一度下ってから弥陀ヶ原の木道を歩き、黒ボコ岩まで戻ったら、ここから砂防新道と別れて未知のルートに入る。かなり急な下りが2ヶ所かるということで少しビビっていたが、結果的にこちらのルートにして正解だった。とにかく景色が良い。既に白山の本体は見えないが、美しい別山がずーっと見守ってくれる。しかも日当たりが良いから花もたくさん咲いている。

観光新道 良いっ!!!

 途中の「殿ヶ池避難小屋」で長めの休憩。天気も良く風も治まり、「ここに住んでもいいなあ」と思える場所だ。そしてさらに尾根を進み、別当出合への分岐まで来たら、あとは急登を慎重に下るだけだ。

 その急登を登ってきた男性が、大汗をかいて狭い道の真ん中で座って休んでいた。ちょっとじゃまだなあと思ったが、かなり疲労している様子をみると「大丈夫ですか?」としか言えない。聞けばペットボトルの水が残り半分を切っていて、「息子が先に行ってて、途中の小屋に水を置いておくと言ってたので・・・ここ登りきったら小屋ですか?」いやいや、ここ登り切って分岐に出ても、そこから1時間半はかかるよなあ。こっちは水余ってるけど、口つけて飲んだやつをあげますってものダメだし、今日は水場あるからと油断して予備の経口補水液持って来なかったし、何もしてあげられないので、「お気をつけて」としか言えなかった。それにしても息子よ、こんなヘロヘロの父親置いて先に行くなよ。

 彼と別れてしばらくして、こちらがそろそろゴールに近づいた頃、「しまった、エネルギーゼリー2つあったんだ。これあげれば良かったなあ」と気がついた。おじさんごめん。でも、その後「白山で遭難。息子に置いて行かれた男性が熱中症と脱水で・・」などというニュースもなかったので、きっと何とかなったのだろう。

 14時10分、別当出合到着。室堂までは登りで3時間20分だったが、下りは3時間40分かかった。まあ、途中の避難小屋で30分くらい休んだから、登りも下りもほぼ同じくらいかな。

 先に下りてた青年が水道で足をギンギンに冷やして、かなり痛そうにびっこを引いて歩いていった。膝かな、捻ったかな? 長い長い下りで、しかも坂はほとんどが石段である。油断すると足を痛めるリスクが高い山だということを再認識する。そんな自分は最後の下でやっぱり膝が少し痛んできた。二王子山でやっちまったところが完全には回復していないようだ。

今日のお風呂
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