
上川層雲峡ICの出口にある駐車場は、トイレもあって車中泊には良い所だ。どういうわけか北海道に来るたびにお世話になっており、もはや勝手知ったる我が家感がある。7月30日昼過ぎに愛山渓温泉まで下見したが、電波が通らず翌日の天気チェックができないため、こちらまで戻ってきた。
翌31日、目が覚めて天気を見ると、快晴とはいかないがとりあえず雨は降らないらしい。急いで車を愛山渓に走らせ、登山をスタートさせる。愛山渓から登る愛別岳、比布岳が良いという話を聞いて、一度は来てみたいと思っていた。愛別岳は危険だというので、様子を見てダメそうならパスし、比布岳に向かう作戦だ。
加えて愛山渓からは周回コースが設定できる。これは、基本的にピストン以外の選択肢のない自家用車にはありがたい。この恩恵を享受すべく、松仙園から沼の平を通り、当麻岳から回ってこよう。

午前5時、愛山渓温泉スタート。少し歩くと松仙園への分岐を右に折れ、なんとかジムニーあたりが走れそうな林道をしばらく歩く。この時点でやや霧がかかっているが、これだけでは何の判断材料にもならないので天候回復を祈って進むだけだ。途中、熊の足跡を発見。前日までの雨で濡れてる土にはっきり跡がついており、昨日か今朝のものだろう。でも獣臭は感じないので気にしないで進む。



5時30分、林道から登山道に入る。特に歩きにくい道ではないのだろうが、道そのものが沢みたいになっていて気持ち悪い。沼の平に出るまではあまり見るものがない印象で、途中で再びクマの足跡をを見つけたくらいがハイライトだろうか。それにしても、この手のひら大の足跡は林道で見つけたのと同じ個体だろうか。一頭が登山道を歩いているとすればそのうち出会いそうで怖いが、別のクマだとしても数が多いということでそれも恐ろしい。とにかくバッタリ出会わないことを祈るしかない。



1時間ほどで登り切り、松仙園に出た。どこからどこまでが松仙園なのかははっきりしないが、湿地帯全体をこう呼ぶのかな? 平坦なルートの大部分には自然保護のため木道が整備され、池塘を見ながらのコースはなかなか良きである。これで天気が良ければ最高なのだが生憎の霧雨。(今シーズンも天気悪い率高し) 四の沼付近にはケルミ・シュレンケという層状?の池塘が見られる。これは大変珍しいらしいが撮った写真で合ってるのかよくわからない。




7時30分、最後にもう一度クマさんの足跡を見つけて、松仙園が終わり合流地点まで来た。ここまでルートは一方通行なので逆からの侵入はできないことになっている。道に負担をかけない登りだけにしているのが理由という。


ここから沼の平・当麻岳を経て比布岳に向かう。天気が回復する気配はなく、もはやこれは霧の中を歩くだけの修行になっている。旭岳方面への分岐まで来たところで、20分ほど休憩しながら「登るべきかこのまま引き返すべきか」悩む。登ってもきっと何も見えないだろう。でも、もしかしたら一瞬でも霧が晴れて愛別岳が拝めるかもしれないと根拠のない願い持って進むことにした。





若干怖かった当麻岳を通過し、もうすぐ分岐点に着くというところでソロの登山者とすれ違った。自分とは逆周りで登ってきた彼は、霧で何も見えんから比布岳も愛別岳もパスして下ってきたという。この言葉を聞いたことで今日の行程は確定だ。分岐に出たら永山岳に向かい、そのまま下山しよう。
11時20分、安足間岳に出る。ここが比布岳方面と永山岳方面への分岐だ。案の定霧雨で視界はなく、吹き曝しで風も強い。さあ、下山しよう。永山岳(山というより小ピーク)を通過し、しばらくザレた斜面を下ると、どうやら雲の下に出たようで、遠くに沼の平が見える。1時間ちょっとで森林に入ると風も感じなくなった。


やれやれだと安心し始めた頃、激しく転んだ。足元の石がちょいと滑り、おっと危ないと左手で木の枝を掴んだら予想外にあっけなく折れた。バランスを崩し頭から木と藪の斜面に突っ込み、4m程度の滑落だ。(滑落というより急な斜面で転んで足が上になったので、目線で4m程度)慌てて起き上がり身体の状態を確認する、少々擦りむいていることくらいで大きな裂傷や骨折はなさそうだ。ヘルメットをかぶっていなかったが頭も問題なさそうだ。(でも細い木にぶつけたみたいで少し頭痛い)慌てるな自分、パニック起こすな自分。引き続き身体の様子を見ながらゆっくり進もう。


斜面を下り切ると沢沿いと尾根道の分岐に出る。沢の道は閉鎖中なので50mほど登り返し、もう登りはない。破れたスボンは悲惨だが身体に問題はない。なんとか無事に帰れそうだ。
尾根道といっても雨で道そのものが沢になって滑る。下手に木の根っこに足をかけるとまた転びそうで、敢えて水の中をジャブジャブ歩いたりする。雨で、しかも転んでボロボロだが気分がハイになってきた。(こういう心理状態は何だろう。)
14時40分、無事愛山渓に戻った。戻った頃には天気は回復し、青空が広がっている。「何なんだよ毎回毎回下山した直後に晴れやがっておいっ」という気分だが、山の方はまだ雲の中なので、狙って意地悪されているわけではないだろう。ただ、平均的な人より悪天候率が高いのは事実。前世で徳を積んでこなかったことは間違いあるまい。

愛山渓温泉で一風呂浴びて、受付のお兄さんにクマの足跡画像を見せて、今日の全行程は終了となる。
この後、家で緊急の用事ができてしまい、一旦山形に戻ることになった。苫小牧まで南下し、フェリーで仙台へ。船のなかで芥川賞を取った「バリ山行」などを読んで過ごした。
今回の北海道は4つ登ってひとまず終了だ。(雨天率75%)

