
夏に北海道に来るのも今年で4回目になる。1回目は退職した2019年の夏に車で一周したが、この年は登山をしていない。老後の趣味に山登りをしようと決めたものの、北海道はヒグマもいるし自分が登ってはならない場所だと決めていた。その後コロナ騒ぎで少し自重していたが、そろそろ良いかなと2021年に再び津軽海峡を渡った。この年は北海道の三百名山をかなりのペースで登り、難関の4座を残すのみとなった。3回目は2023年。残していた大千軒岳、神威岳、ペテガリ岳をなんとかクリアしたものの、申し込んでいたカムエクツアーが雨で中止となり、少々残念な気持ちで帰宅した。そして今回が4回目になる。カムエクに登るのがメインの目的ではあるが、いくつか気になる山にも行ってみようと思う。
7月19日に山形を出発し、20日には青森港から苫小牧にフェリーを使う予定だ。しかし、秋田を過ぎたあたりでフェリー会社から電話があった。海が荒れていて欠航だそうな。しかし函館行きの航路は大丈夫で増便が出るというので迷わずそちらを予約する。20日午後、フェリーは予定通り青森港を出港し、無事函館に辿り着いた。
北海道にはこれから1ヶ月滞在するので特に急ぐわけでもなく、なんとなく積丹半島から小樽を周り、札幌に向かった。札幌自体に興味はあまりないが、ガーミンの代理店があるので立ち寄ることに。そして店員さんの説明とセールストークに納得してひとつ購入。使い方がいまひとつ理解できていないが、北海道の山で少しずつ試そうと思う。(ちなみにガーミン購入の理由は、スマホのバッテリー節約のためである。予備のバッテリー持てばいいじゃんという話なのだが、最近スマホの調子が悪く、最悪フリーズしても予備のGPS地図があるのは心強い)
そんなこんなでダラダラしながら少しずつ内陸に向かい、24日には楽古岳の登山口まで来た。「えっ?アポイ岳じゃないの?」
そうなんです。楽古岳に登るつもりだったんです。でも、歩いて早々の渡渉が増水で危ないと感じ、急遽アポイ岳に変更したのでした。5時に楽古岳登山口を出発し、アポイ岳の駐車場に着いたのは6時過ぎ。急いで準備をして6時20分スタート。
前置きがずいぶんと長くなった。アポイ岳は300名山にも入っていないが、はんれい岩とかんらん岩の層が見えるという地学マニアには外せない山である。稜線から見る海が気持ち良いお気に入りの山なので再び訪れることに高揚感もある。そういえば3年前は地元の小学生の遠足とぶつかって、なんとなく引率者になった気分で歩いたっけ。


スタートから5合目の避難小屋までは森林の中を少しずつ高度を上げていく。小学生の集団を一緒だった前回とは打って変わって周りには誰もいない。クマ出ませんようにと祈りながら沢沿いの道を進む。途中に「◯合目」の標識があるので進捗がわかりやすい。休憩スペース(ベンチあり)も数カ所あるのでゆっくりペースの人にも優しい山である。また、所々に山と自然の案内標識があり、これも勉強になる。



7時30分、5合目の避難小屋に到着。ここで森林はなくなり、眺望の良い道になる。眼下の雲海と青空のコントラストが美しい。どうやら天気の心配はなさそうだ。
ここからは岩とハイマツの道になり勾配も少し急になる。とはいえ既に半分は過ぎているし、急ぐこともないので景色を堪能しながらゆっくり進む。それでも9時すぎには山頂に着いてしまった。それにしてもこのアポイ岳、山頂だけ再び森林が現れる不思議な山だ。これは遠足のコースとしては理想的だなあな。何十人の子どもを引率して登った先に日陰と風除けがあるって、先生方にとっては有り難い。眺望も途中の尾根で堪能できるし言うことないなあ、と3年前を思い返す。
思えば3年前は、遠足のみなさんにクマ避けの役割をしてもらいながらゆっくり登ったっけ。スタートが遅かったこともあり、昼前に登頂し、お昼もゆっくり取って遠足の後ろをゆっくり歩いたっけ。でも今回はゆとりがあるので「旧幌満お花畑」という場所を通る迂回コースを降りてみる。海に向かう緩やかな稜線を下ると15分ほどで「旧お花畑」に出た。「旧」と名のつくのは今はほとんど花がないからだ。昔は「ヒダカソウ」という固有種の群落があったそうだが、盗掘によりほとんど姿を消したという。看板の説明が悲しい。

そういえば地元山形の千歳山も、ユリの季節になるとせっかくの花を盗掘する人がいる。自然を破壊する人は山に来て欲しくないものだ。
「旧幌満お花畑」からはほぼ水平に元の登山道に戻ることになる。このトラバースルートが思ったよりもキツかった。特に危険なこともないが、あまり歩き易い道ではないこともあって長く感じる。とはいえ30分かからず8合目付近で合流し、あとは元のルートをまっすぐ下山。ビジターセンターに戻ったのは12時過ぎだった。
下山後はアポイ山荘でお風呂。ここは良き。
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