午前中に韓国岳を往復し、天気が良くなった午後の時間を生かそうと、急遽高千穂峯に登ってしまおうと決断し、車を駐車場に走らせる。20分であっという間に駐車場に到着し、駐車料金の500円を払って突入。(今日は駐車料金が2カ所で1000円になった。)駐車場受付のお兄さんに「今からでも大丈夫でしょうか。」と聞くと、「4時間ですから、大丈夫だと思いますよ。」という返事。よし、決行だ。
午後に出発するなどという暴挙に出てしまったため、気持ちが焦って早足になる。いや、いかんいかん、スタートで頑張りすぎて潰れる悪癖が出てしまうではないか。でも、午前中にかなり動いてるから、昼に長く休みすぎた午後の行程と解釈もできるなあ。
などとペースと自分の体調を秤にかけながら、とにかく足は止めない。
12時50分、林を抜けて御鉢への取り付きにきた。見れば軽装の家族がこれから登ろうとしている。時間的にも問題はないということだろう。一安心だ。(これがどんどん下りてくる人の中一人で登る状況なら、やめたかもしれない。)ここからは木が1本もないガレ場を登る。景色は良いが、木がないと滑り落ちた時を想像してしまう。いい加減慣れろよと思うが、高所恐怖は一生治らないだろう。岩は完全な溶岩が多く、その色も黒だったり赤だったりと奇妙な景観が広がる。九州には火山の面影が生々しい独立した山塊がいくつか見られ、東北の山とは異質の力強さというか、荒々しい大地の鼓動を感じる。桜島、霧島、阿蘇、九重と、今も噴煙と蒸気を吹いている所が多い。違った世界にやってきた感があって、楽しい。
13時15分、御鉢の縁まで来た。ここからは半周のお鉢周りになる。それほど切り立っているわけではないものの、両側が急斜面になっている所は怖い。これで午前中のような強風だったら泣きが入っただろう。でも、空は青く風もない。ぽかぽか陽気と言える天候で、コンデションは最高だ。
15分ほど御鉢の縁を歩くと、一旦少し下ってから最後の登りになる。小石まじりの道はスリップし易く、慎重に足を運ぶ。ごつごつした溶岩のほとんどはしっかりしているが、まれに浮石もあるので注意が必要だ。
13時50分、山頂に辿り着いた。結局1時間20分で登ってしまった。これまで「コースタイム通りに歩く」というのが自分の平均的なスピードだったが、もしかしたら山の歩き方に慣れてきたのかもしれない。もちろん早く歩くこと自体を競う必要もないし、「自分はコースタイムの6割くらいで歩けるから、この時間でも大丈夫。」などと過信したら、おそらく自分は命を落とすだろう。でも、いざという時スピードを上げる力があるというのは悪いことではない。
風はほとんどないものの、座っているとやはり寒い。レインウエアを羽織り、温かいカフェオーレを飲みながらパンをかじる。視線の先には韓国岳。雲のない青空の下でゆったりと佇んでいる。今、あちらの山頂にいても気持ちがいいだろう。午前中の強風に負けて早々に退散したことを少し残念に思う。でも、期せずして一日で2峰を登ることになり、これはこれで良かった。フリーの身で日程に縛られないとはいえ、日が嵩めば費用も嵩む。一日早く次に進めれば、2000円ほどの節約になる。(いったい一日いくらで生きてるんだ。)
2時前に山頂に着いたので、もう急ぐ必要もない。おまけにとても良い天気。遅れて登頂した人のカメラマンを務めながら30分ほど山頂で過ごした。(自分にとって30分の滞在は、かなり長い。)
下りは慎重に行かなければならないが、それでも登りより時間がかかるということもない。15時にはお鉢の麓まで戻り、林の道に入った。そして15時20分、駐車場に到着。予定より1時間早く下山できた。急ぐ必要はないとは言うものの、山を降りれば明日の登山口までのドライブが待っている。できれば明るいうちに登山口に着きたいものだ。リュックを車に入れ、靴を履き替えたら早々に出発。次の目的地は尾鈴山。一旦宮崎の海沿いに出てから登山口に入る。ナビを設定すると2時間以上かかるようだ。残念だが2日連続で真っ暗な登山口に突入することになりそうだ。