北海道東部の百名山である羅臼岳、斜里岳、雌阿寒岳の3つは、珍しく友達と一緒の行動になる。特にどちらがリーダーということでもないが2人分の責任が伴うのは当然のことで、しかも相手は自分よりも若いので、仮にクマに襲われたら自分が盾になるしかあるまい。少なくとも「熊出る→バディを前に出して自分だけ逃げる→背中を見せて逃げる自分に熊が反応して追ってくる→熊パンチ炸裂」という情けない終わり方はしたくないものだ。
前日、女満別空港にお迎え。そこからいくつかの観光地を経由して登山口に移動して一泊。そして19日午前7時に出発。朝は若干霧雨っぽかったが、陽が高くなると青空が広がりコンディションは申し分ない。あとは熊さんがでないことを祈るのみだ。
ちなみに、知床半島は北海道でも有数のヒグマ生息地だ。昔聞いた話では、子連れの母熊はオス熊から子を守るために敢えて人間の近くにくるのだそうだ。そんなメス熊を追ってオス熊も人間にビビりながらも近づいてくるので、人のいる場所まで大挙して押し寄せてくるらしい。(なんとなく、シングルマザーの内縁の夫が子どもを虐待するという事件を思い出してしまう。)
スタートは特に北海道らしさを感じることなく林間の道を進む。40分かけて「オホーツク展望」に着くが、まだ霧が濃いのでそのまま通過。およそ90分で「弥三吉水」。コースタイム2時間のところなので、×0.8程度の速さで進んでいる。このあたりからソロで来ていた男性と少し一緒になる。彼は「こんなに長い距離を登るのは初めてで。」と、なんとも危ない言葉を口にした。大丈夫だろうか。そんな男性を追い越し、時に雪渓を渡り、時に道を間違い(雪渓を横切らずに登ってしまった)ながら高度を稼ぐ。
9:30、銀冷水キャンプ指定地まで来た。ここから大沢という谷に残る雪渓を登れば平坦地になる。大沢の雪渓では、山の管理人らしき人が作業をしていた。「私が羅臼山そのものです」と言わんばかりのひげのおじさんは、「最後の登りのところに雪渓が残り、そこで滑落すると岩に激突するよ。ルートの目印つけておいたからそこを歩いてね。」という有難くも恐ろしいアドバイスをくれた。
最後の急登を登って羅臼平に着いたのが10時20分。ここはキャンプ指定地になっていて、フードロッカーというものも初めて見た。(でもここでテント張るの怖い)この場所はルートの分岐点になっており、知床の山々を縦走して硫黄山に向かう人はここから左。羅臼岳に登る人は右に進む。
身体は小さいが体力はきっと自分の2倍ある相方は元気そうだ。少し休憩してすぐに山頂に向かう。管理人さんの言う通り、そこそこ急な雪渓を越え、その先はでかい岩によじ登り、無事山頂に到着。時計は12時を指していた。
山頂でしばらく休憩。後から登ってきた若いペアに写真を撮ってもらったり、遠くの斜面を下りてくる熊を教えてもらったりして過ごす。そして若い二人を追うようにして下山開始。途中、下の雪渓に熊を発見し、先行する二人に「おーーーい!雪渓にくまーーー!」と叫んだら、熊の方がびっくりして逃げていった。熊が人間を恐れているというのは本当らしい。
結局、ヒグマを見たのは羅臼岳が最初で最後だった。
登りは気持ちも張っていたためか疲れをあまり感じなかった。しかし下りは気が抜けたのか、かなり疲れている。歩いても歩いてもゴールにたどり着かない感覚。途中で若い二人に抜かれ、心配していたソロの男性にも抜かれ、登山口に戻ったのは16時30分だった。
この日は清里町まで移動して宿泊。