カムイエクウチカウシ山は、日本三百名山の中でも最難関の山のひとつ。普通の行程ならテント泊で2泊3日となる。(避難小屋は、ない)ガイドブックによれば距離が長い上にルートも明瞭でなく、完全に上級コースに位置付けられる。それに加えてこの山域では、北海道の歴史上最も悲惨なクマ事故のひとつが起きている。1970年7月、福岡大ワンダーフォーゲル部の3人がこの地で亡くなっているのは、北海道の山に登る人なら誰もが記憶している大事件である。もちろんクマの被害は本州を含む他の山でも起きてはいるが、ここだけはソロの自分が行ってはならない場所と感じる。だからこの山はガイドツアーに参加して登る。料金は82000円で、少々お金もかかるがこれは仕方のないこと。

 8月10日は帯広のホテルに泊まり、部屋の中でしっかりパッキングをする。車中泊しながらでも問題ないのだが、ここは落ち着いてひとつひとつ確認していく。ついでに体もリフレッシュ。11日はひとまず「日高山脈山岳センター」と、登山スタート地点の駐車場を下見して、当日の集合場所になっている中札内村に戻る。そして道の駅で宿泊。

初日(8月12日)

 自分の集合場所になっているセイコーマートに7時前に移動。本隊と合流して食糧を買い、日高山脈山岳センターに車を連ねて行く。山岳センターでもう一人と合流して、スタッフ3名、参加者6名、合計9名の全員が揃った。(自分も山岳センター集合で良かったかなと思うが、申し込んだ時点で「山岳センターは電波が届くのだろうか」ということが不明だったのでガイドの指示通りにセコマ集合にしたのだった。)

スタート地点の駐車場

 ここでスタッフのワゴンと参加者の車一台に分乗して駐車場に向かう。8時20分、駐車場到着。すぐに準備をして8時半スタート。最初は車も行けそうな林道をひたすら歩く。9人という大きなグループでもあるのでガイドさんも慌てずゆっくり進む。これは一人の時よりもずいぶん遅いなと感じるが、今回は歩くペースを理解することも大切なことかもしれない。天気は晴れで、明日も問題なさそうだ。

最初は普通に林道歩き
七ノ沢出合から沢履

 10時50分、七ノ沢出合で沢履に履き替える。ここからいよいよ渡渉が始まる。今日までしばらく雨が続いたが、沢の水に影響はなさそうで水が澄んでいる。途中少し流れが早く、ガイドさんがサポートしてくれた場所もあったが、特に問題はない。途中で長めの休憩をとったこともあり、1時過ぎに八ノ沢出合に着いた。計画当初は先の三股でテン泊の予定だったが、登山者が多く狭い三股でテントが張れない可能性があるので大事をとってここでテント設営に入る。

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 その分明日は厳しくなるが、それでもコースタイム8時間程度なので、早朝出発なら問題なく戻って来れるだろう。特に今回はガイドさんが一緒なのだから。

2日目(13日)

 朝食時にガイドさんから登頂中止の説明を受ける。泊地は電波の届かない場所だが、昨夜から衛星電話で天気の確認をしていたとのこと。これから雨になり、最悪下山できず孤立するリスクもあるので早めに撤退することになった。現時点で雨は降っていないが、ガイドさんがそう判断したのだからこれは仕方がない。残念という気持ちが8割だが、2割くらいホッとしている自分もいる。

 思えば自分はかなりの雨男である。雨男の自分が山に登る時、どうして晴れが多いのかというと、それは晴れた日を選んで登るからだ。今回は1年も前から日程が決まっていて動かせないので、雨男の本領発揮というところだろう。参加者の皆様ごめんなさい。

 もし、自分一人だったら電波の届かないこの場所で撤退する情報はなく、きっと登っていただろう。もしかしたら何とか登っちゃって、そして明日には普通に下山できたのかもしれない。実際、登って行った人もいる。でも今回はガイドさんがいて、ガイドさんはパーティーの安全に全責任を持っていて、我々はその「正しい判断」にお金を出しているのだから、これはこれで諦めるしかないな。

 スタッフがテントを撤収している間に希望者だけ少し沢を上がり、カムエクの山頂が見える筈の場所まで行って「やっぱり雲の中で見えないねえ」と確認してテン場に戻った。そして6時少し前に下山開始。再び沢をジャブジャブと渡り、七ノ沢出合からは登山靴に履き替え、長い林道を歩き、10時前には駐車場に戻った。

ほんのちょっと上流へお散歩
そして撤退

 これで今回のカムエクツアーは終了となったが、八ノ沢までの雰囲気はつかめたので、チャンスがあれば一人でいってしまおうか。(いや、やっぱりそれは危険か)

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