前回の「金峰山」に続いて、山の友達とペアで登ります。しかし、今回は異常に緊張しています。独身の若い女性と一緒だからです。いえ、下心とかそういう意味ではなく、「若い女の子をご両親から預かるわけだから、万が一にも怪我などさせてはいけない、遭難なんてもっての外である。」という緊張感です。例えが変かもしれませんが「天皇を引率する」に匹敵するプレッシャーなのです。
(天皇を引率した経験は、ありませんが。)

 そこで、この度の登山の前に、動きましたよ。何したかというと、これ!

ここヘリの発信機

 そうです。遭難した場合にヘリから見つけてもらう発信機です。これを契約しました。(えへん)
 さらに、「登山コンパス」の入山届を出していきます。これで、下山予定から7時間経っても下山届が出ない場合、私の家族にメールが届くシステムです。もちろん無理をしないでゆっくり登るのは言うまでもありません。

11月2日(前日)

 燕岳は、おそらく日本一評価が高い山小屋である「燕山荘」があるので、特に土日は異様に混むとのこと。既に11月に入っているので夏ほどではないでしょうが、登山口の駐車場が満杯という事態も考えられます。そこで、前日の夕方早いうちに現地に着き、いつも通り車中泊です。パートナーのYさんは、東京から「毎日アルペン号」の夜行バスに乗り、明日朝合流です。
 午後3時過ぎに現地の中房温泉に到着。ここまで「登山口の駐車場は満車です。麓からバスを利用してください。」という看板を無視して「中房第一駐車場」まで来ましたが、予想通り10台以上の空きがありました。よほど人気の山でも、前日車中泊なら大抵大丈夫です。
 さっそく登山口にいた係の方に「登山道の雪はどうですか?」と聞いてみると「日陰の一部は雪が残っているけど、アイゼン等は必要ない。」という返事。明日は天気も悪くないようなので、これなら無事に登れそうです。

この日は前方の小屋にある風呂に入りました。

11月3日(登山初日)

 幸い車中はそれほど寒くもならず、快適に眠れました。午前4時半に起床。すぐに準備をして、200mほど登った登山口に向かいます。こちらベンチでお湯を沸かしながらYさんを待ちます。
 6時少し前にバスが到着。Yさんは元気そうでひと安心。カップの味噌汁でおもてなしをして、朝食を食べて出発します。

 6時30分、登山口を出発。燕山荘までのコースタイムは約4時間なので、休憩を入れて11時に着けば上々でしょう。
 Yさんと私の体力は、これまでの経験上ほぼ同じ。お互いに「ゆっくり行こうね。」と確認し合い、普通に話ができるペースで登ります。途中の第1ベンチ、第2ベンチできちんと休憩を取り、甘いものを口にしながらの行程は、体に負担がかからずゆとりの登山です。振り返れば登山を始めた頃、周りのペースに負けじと意地になって進み、沈没したこともありました。あの頃に比べると自分のペースで楽しめるようになったなあと、成長を感じます。体力的に成長していないのが少し残念ですが。

合戦小屋到着。ここから残り1時間。

 9時30分、合戦小屋に到着。ここまでコースタイムぴったり。さすが自分と自画自賛。ここでカフェオーレを飲んで一息ついて、20分ほどゆっくり休憩し、山頂を目指します。

 しばらく登っていくと、「最後の槍だったねえ。」という下山者の声が聞こえ、ふと稜線を見上げると、見えました槍ヶ岳。意外に近く見えるのですね。Yさんと二人で盛り上がります。

槍ヶ岳、やっぱりかっこいいですね。

 さらに登っていくと、日陰の部分にうっすらと積雪があり、少し慎重になります。私は雪国の生まれなので得意な方だと思っていますが、「得意である」という意識って逆に怖いですからね。Yさんの方はどうやら雪や凍結が苦手なようで、思いの外慎重に歩いています。うん、この人は遭難しない人だなあと感心してしまいます。

燕山荘が見えてきました。
陽の当たらないところは、雪が踏み固められてツルツル。

 慎重に進みながら、11時すぎに燕山荘到着。今回も完璧にコースタイム通りに来ました。すぐにチェックインして食堂で昼食。それにしても燕山荘は大きい山小屋です。それに、今日はほぼ定員の形で眠れそうです。(結局4人スペースに4人という山小屋としてはゆったりスペースでした。)

あったかい食べ物が体に染みる。

 午後からは大きな荷物を燕山荘に置いて、燕岳を往復します。燕山荘に上る途中で話したご夫婦が「北燕まで行くと、立山まで見えるわよ。きれいよ。」と言ってたので、とりあえず言ってみることにしました。
 途中、有名な「イルカ岩」「メガネ岩」などを見ながら、燕岳に登頂。でも、そこから先が10センチくらいの圧雪で少し滑ります。ここで念のため簡易アイゼンを装着してゆっくり進むことにします。場所によっては滑落の恐れもゼロではないので、慎重の上にも慎重に・・・どうやって登るのかよくわからない岩場をよじ登りながら、北燕の手前の岩場を超えたところで「戻ろうか。」という話になり、再び慎重に圧雪路を渡り、2時半に燕山荘に戻りました。

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花崗岩が独特の雰囲気を醸す燕岳。
目の前に槍ヶ岳が見えて、いい場所に来たと感じます。
有名なイルカ岩と槍ヶ岳。
メガネ岩・・・うーん。
山頂付近から燕山荘を望む。
燕山荘、きれいで素敵な山小屋でした。

 燕山荘では、ゆっくりビールを飲み、夕食も美味しく、マスターの話やホルンの演奏も楽しく、愛される理由がわかります。景色がよく、山小屋も素敵ですからリピーターが多いのも頷けます。ただ、今回はほぼシーズンオフに突入した11月初旬だったので、大混雑にはなりませんでした。これがシーズン中ならどうだっただろうかと心配にもなりました。

11月4日(登山2日目)

 夜はみなさん良い子に寝てくれたので、静かな中で気持ちよく眠れました。朝朝食は順番で2回に分かれますが、幸い1回目に入れました。朝食も山小屋としては上々です。(デザートのゼリーが何味なのかよくわからなかったのが、ご愛嬌)。早めに朝食を平らげ、ご来光を望もうと外に出ましたが、霧が濃くて全く出てくる気配がありません。諦めて部屋に戻って準備をしていたら、何やら外が騒がしくなり、窓のカーテンを開けるとオレンジ色の太陽が・・。慌てて外に出て写真をパチリ。自然とはわからないものです。

朝日、出たー!!
斜面に朝日が当たって美しい。テントの人、寒かっただろうな。
令和1年11月4日、ツバクロ♡。霜かなり降りたんですね。

 7時、燕山荘出発。下りなので今日は楽チンです。コースタイムは2時間40分。途中休憩を入れても10時くらいには到着するはず。Yさんが「毎日アルペン号」で東京に戻るので、12時には戻らないといけませんが、まず大丈夫でしょう。
 下りもあまり急ぐことなく慎重に進み、槍ヶ岳との別れを惜しみ、富士山に感動し、予定通り10時に下山できました。下山したら、忘れずに「登山コンパス」で下山届を送信。これを忘れると大変ですから。

帰りは第1ベンチにある水場にも立ち寄り。
最後は急です。ゆっくりゆっくり。
無事到着。

 下山後は車で有明荘まで下りて入浴、登山口の露天風呂も悪くないですが、有明荘の方が広く、洗い場もきちんとあるので、下山後の入浴はこちらの方が良いかなあと思います。燕山荘と姉妹施設なので、燕山荘で入浴割引券を発行してもらえます。
 入浴後は有明荘の食堂で昼食を取り、Yさんの乗るバスが来たところでお別れになりました。

有明荘の露天風呂(HPより)

有明荘(燕山荘グループ)HP

 冒頭でも書いたように、今回は嫁入り前のお嬢さん(前近代的な表現だな。)をお預かりしての登山でしたので、事故や怪我があってはならないと、かなりプレッシャーを感じました。まずは無事に終わってホッとします。それにしても、燕岳と燕山荘、良かったですね。いつかまたチャンスがあれば行ってみたいところのひとつです。

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