土門拳という人物を知っていますか?

昭和を代表する写真家のひとりで、徹底してリアリズムにこだわった数多くの作品を残しています。

また、仏像や寺院といった日本文化へも愛情を注ぎ、写真に収め続けました。

彼のリアリズム写真には多くの共感と批判がありました。

いろいろな意味で多くの足跡を残した写真家、土門拳。

その記念館が、彼の生まれた酒田市にあります。

 

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土門拳の写真

土門拳の写真には、いくつかのテーマがあります。

有名なのは
「著名人のポートレート」
「昭和の時代を切り取った写真 とりわけ子供たち」
「寺院や仏像など日本文化」

「古都巡礼」と名づけられた仏像や寺院の写真集が有名ですが、

私自身は、昭和の子どもたちの写真が好きです。

豊かではなかったかもしれないけど、幸せな時代を生きた子供たち。

いい表情しています。

こどもを撮っているときは、
これが二度と撮れない
などといった厳しさは、
それほどにも
感じていないときもあった。
そんなものは
いつでも撮れると思っていたのだが、
実際には、そのとき、
それを撮っておかなければ、
今となっては、
もう
二度と撮れないのである。
     (私の履歴書)

こういう、音のしない写真も得意でした。
(写真だから音はしませんが・・)

みなさんの町にちょっと大きめの図書館があれば、ぜひ探して下さい。

土門拳の写真集、きっとありますよ。

 

土門拳記念館(酒田市写真展示館)について

記念館の発端は、土門拳が
「自分の全作品を酒田市に寄贈したい。」
と申し入れたことでした。

それを受けて酒田市は、
土門拳の写真記念館を新しい公園の中に建てることを計画します。

設計を任された谷口吉生氏は、設計に当たり、土門拳の作品をつぶさに見て、
土門拳ゆかりの人を訪ねては話を聞き、
土門拳の思いをしっかり理解した上で、
自然と建物が調和し、土門拳の写真を展示するにふさわしい設計をしたといいます。

谷口吉生氏の建築については、こちらも興味のあるところですが、
今回はパス。

いずれまた触れたいなと思います。

記念館の建設に当たって、土門拳と深い親交のあった芸術家たちが力を集結した。グラフィックデザイナー亀倉雄策氏が入口正面に銘板とほかにポスター・チケットを、彫刻家イサム・ノグチ氏が中庭に彫刻とベンチを、華道草月流三代目家元勅使河原宏氏が庭園とオブジェを、それぞれに寄贈。この友情のプレゼントは、記念館の芸術的趣を一段と高めている。2009年には、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で二つ星として掲載された。
(土門拳記念館HP)

なんと、ミシュランの2つ星ですよ。

残念ながら、曇り空でやや風もありました。

これが晴天で水面が落ち着いていたら、きれいです。

わくわくしてくるエントランス。
(ちなみに、奥に見える階段は、美術館の反対側に抜ける通路です。)

敢えて自動扉にしないところがおしゃれ。

中庭です。ゆっくりできるイスがありますが、
これから中に入ろうというところで休む人は、たぶんいないかな。

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展示スペースは大きくはありません。

でも、とても雰囲気のよい空間です。

ソファにもたれて、この空間に長く浸りたいと感じます。

(そうそう、写真撮影OKです。フラッシュなしにすることと、作品を狙った接写はだめですが。)

湖に向かって大きなガラスとソファ・・・こちらもずーっといられます。

定員は2組。

一番奥の小さな展示室は、庭に向かってイスが並んでいます。

外の湖や庭園も含めて、この建物ができている。

谷口氏、さすがです。

土門拳愛用の「ニコンSP」と「ニッコールレンズ」

ニコンSPは、名機と言えるカメラですが、
現代のデジタル一眼の方がはるかに性能がいいはず。

そんな我々が、土門拳の写真を見ると、
ため息しか出ない。

機械じゃない。やっぱり感性と技術だな。

ちなみに、土門拳はライカも使っていたそうです。

ライカのカメラ、あれもいい。

昔々、ライカの工場(ドイツ)を見学する機会に恵まれました。
ボディを削り出しで作っているという話を聞いて、
「そこまでやるか!」と、驚いたものです。

ところで、この写真で気づいたこと、ありませんか?

手前から向こうに行くにつれて、柱が細くなり、窓ガラス面が広くなります。

暗い写真展示室から、明るい水辺の部屋へと、

光のグラデーションで誘います。

洒落てます。

この手法は、実はエントランスでも発見できたのですよ。

柱とガラス面がどう変化しているか、見て下さい。

ちょっとしたこだわりが随所に見られ、建築としてもほんとにレベルが高いです。

 

土門拳記念館のデータ

開館時間 9時~17時

4月~11月は、無休。
(市の美術館なのに、めずらしいですね。)
12月~3月は、月曜日が休み

入館料 430円
(特別展の時は800円)

詳しいデータは、公式ホームページを参照してください。

土門拳記念館公式ホームページ

建物や庭、風景の美しさは、ホームページの写真が際立っています。

また、いくつかの作品もホームページから見ることができます。

 

ひとつだけ残念なこと

それは、カフェがないことなのです。

多くの客がくるではないだろう公立の美術館ですから、
仕方のないことですが、
この素敵な空間のなかで、
おいしいコーヒーを味わうスペースがあればなあと
ちょっと残念に思います。

なお、奥の部屋(水辺と庭の見える部屋)のそばに、
自動販売機があります。

 

カフェも食堂もないけれど、

来て損はない土門拳記念館。

どうですか?

一度、訪ねてみませんか?

 

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